台湾南部のナーシングホーム入居者のフルオロキノロン系耐性ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)保菌★
Colonisation of fluoroquinolone-resistant Haemophilus influenzae among nursing home residents in southern Taiwan
C.-M. Chang*, T.-L. Lauderdale, H.-C. Lee, N.-Y. Lee, C.-J. Wu, P.-L. Chen, C.-C. Lee, P.-C. Chen, W.-C. Ko
*National Cheng Kung University Hospital, Taiwan
Journal of Hospital Infection (2010) 75, 304-308
フルオロキノロン系は呼吸器感染症の治療に広く使用されているが、フルオロキノロン耐性ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)はまれである。2007年に、台湾南部のナーシングホーム4施設の入居者150人を対象に、2か月ごとの咽頭スワブおよび喀痰の培養による前向きサーベイランスを実施した。入居者30人(20%)からH. influenzae分離株48株を採取した。分離株の血清型はいずれも非b型であり、27株(56.3%)はβ-ラクタマーゼ陽性であった。分離株20株(41.7%)はレボフロキサシン耐性(最小発育阻止濃度[MIC] > 2 μg/mL)、21株(43.8%)はモキシフロキサシン耐性(MIC > 1 μg/mL)であった。高度のレボフロキサシンおよびモキシフロキサシン耐性(MIC > 32 μg/mL)が、それぞれ19株(39.6%)と15株(31.3%)に認められた。入居者150人の中で、尿路カテーテル(P = 0.018)または気管切開チューブ(P = 0.029)の留置と、気道におけるモキシフロキサシン耐性H. influenzae保菌との間に独立した関連が認められた。H. influenzae保菌入居者30人の中では、モキシフロキサシン耐性と有意な関連のある因子はなかった。パルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)により、分離株は14の型に分類された。29株は2つの主要なクローンのいずれかに属しており、このうち27株はナーシングホーム1施設の入居者13人から検出された。フルオロキノロン耐性分離株は、2株を除くすべてがこれらの2つの主要なクローンに属していた。本研究から、フルオロキノロン耐性H. influenzaeが出現していること、および台湾南部のナーシングホームの入居者に、そのクローン性の拡散がみられることが判明した。フルオロキノロン非感性およびフルオロキノロン耐性の臨床的意義とその程度について、さらなる研究が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
フルオロキノロン耐性H. influenzaeが保菌伝播によって拡散していることの意義は定かでないが、今後の薬剤耐性菌の動向に関する1つの懸念材料ではある。隣国である台湾での状況だけに、日本への影響が気になるところではあるが、台湾や韓国で日常的に検出されるバンコマイシン耐性腸球菌が日本ではさほど検出されないことを考えると、このことが我が国にとって直ちに脅威であるということにはならないだろう。
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