検査確認された病院血流感染症:全国サーベイランスのデータと臨床および財務に関する病院のデータとを関連づけて入院期間延長と医療費増加を評価する★
Hospital-acquired, laboratory-confirmed bloodstream infections: linking national surveillance data to clinical and financial hospital data to estimate increased length of stay and healthcare costs
F. Vrijens*, F. Hulstaert, S. Van de Sande, S. Devriese, I. Morales, Y. Parmentier
*Belgian Health Care Knowledge Centre, Belgium
Journal of Hospital Infection (2010) 75, 158窶・62
この対照化コホート研究では、ベルギーの急性期病院19施設から収集した患者1,839例(年齢範囲1歳未満から80歳超)を対象として、病院血流感染症(HA-BSI)が入院期間および入院医療費に及ぼす影響を推定する。この研究の副次的な目的は、マッチング基準の選択の影響を評価することである。患者の医療記録の機密保持にかかわる権利に配慮しつつ、HA-BSIの全国サーベイランスのデータと病院が管理する退院データを関連づけた。対照は、マッチさせる因子として、病院、全患者精密化診断群分類、年齢、主疾患、Charlson併存疾患指数、および感染症までの期間※の中からいくつかを組み合せて選定した。結果としては、マッチさせる因子の選択に応じて入院期間延長の推定値が26日間から10日間へ短縮し、最も重要な因子は感染症までの期間であった。HA-BSIに起因する入院期間延長は9.9日間(95%信頼区間[CI]7.8~11.9日間)であった。感染症1件あたりの追加費用は4,900ユーロ(95%CI 4,035~5,750ユーロ)であり、追加費用の58%が入院期間延長、10%が抗菌薬、10%がその他の医薬品、15%が診療費によるものであった。主要な結論として、検査確認されたHA-BSIによって生存した患者でも入院期間が10日間にわたって延長し、この推計には感染症までの期間の因子が重要な影響を及ぼしていた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
ベルギーでは、すべての退院患者に関する入院記録をまとめた病院臨床データベース(Hospital Clinical Database;HCD)、病院が保険支払機関へ請求した入院費をまとめる病院財務データベース(Hospital Financial Database;HFD)があり、HCDとHFDを突き合せることによって、たとえば急性期ケア病院における入院1日あたりの費用が285ユーロと推定されるなど、医療経済に関する評価のシステムが存在する。
また、この論文で示されているように、対照比較研究においてはどのように対照症例を選定するのかによって結論が異なるので注意が必要である。HA-BSI症例と比較するためには、対照はそれに見合う入院期間が必要であり、選定された対照がHA-BSIを発症しない短い期間の入院症例であれば結果に重要な影響を及ぼしてしまう。
監訳者注:
※感染症までの期間(time to infection):対照を選定する際に、症例がHA-BSIを発症までの日数と同等以上の入院期間があると確認すること。
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