短期間の隔離策が入院患者に及ぼす心理的影響★
Psychological impact of short-term isolation measures in hospitalised patients
M.W.M. Wassenberg*, D. Severs, M.J.M. Bonten
*University Medical Center Utrecht, The Netherlands
Journal of Hospital Infection (2010) 75, 124窶・27
長期間の隔離などの感染制御戦略の対象となる患者には、不安や抑うつなどの予期せぬ悪影響が生じることが報告されている。しかし、多くの隔離予防策は短期間である。そこで、短期間の隔離を受けた患者を対象として、不安と抑うつの程度およびQOLを判定した。大学病院で実施したマッチドコホート横断研究により、Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS-A[不安]、HADS-D[抑うつ])、EQ-5DのVisual Analogue Scale(EQ VAS)、および隔離に関する評価質問票を用いて、感染制御のために隔離された患者を隔離開始から24~48時間以内に評価した。隔離患者1例に対して、マッチさせた対照2例を選択した。隔離患者(42例)および対照患者(84例)のスコアはHADS-A(4.5対5.0)、HADS-D(4.0対5.0)、およびEQ VAS(65対62)のいずれも同等であった。重回帰分析では、合併症とEQ VASの結果との間に関連が認められたのに対して(P = 0.005)、隔離されたことを含むその他のすべての変数と、HADSおよびEQ VASのスコアとの関連は認められなかった。患者は隔離策に対して肯定的な見方をしていた。隔離患者が認識する医師および看護師のケアの質に対する隔離策の悪影響は、それぞれ患者の74%および71%がないとした。結論として、短期間の感染制御対策は、入院患者の不安と抑うつの程度およびQOLに影響しなかった。実施した感染予防策に対する隔離患者の態度は肯定的なものであった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
この問題は、感染対策にかかわる者であれば、時として現場から寄せられる陳情の1つとして頭を悩ませることが少なくないであろう。隔離は別の角度からみれば人権の一部制限を伴っているからである。しかしながら、個室隔離のために現在入院している非保菌患者を動かして調整することを嫌がり、「患者がかわいそう」という口実として隔離を拒否する場合がある。このような場合には、患者の理解が得られるように説明に同席するなど最大限現場を補助し、妥協したりあきらめたりしてはいけない。なお、本研究の対象はSearch & Destroy policyが一般市民にも浸透しているオランダであり、我が国の国民性とは異なっていることにご注意されたい。
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