持続的効果のある新規製剤を用いた病院環境における細菌による表面汚染の減少

2010.06.30

Reduction of bacterial surface contamination in the hospital environment by application of a new product with persistent effect


G. Hedin*, J. Rynback, B. Lore
*Falun Hospital, Sweden
Journal of Hospital Infection (2010) 75, 112-115
病院で表面消毒をルーチンに実施することの有益性については議論が続いている。本研究では新規製剤AppeartexRの評価を行った。本製剤の活性分子は正電荷を有するため、表面への使用後に残留効果が得られる。Appeartex使用から1日後の持続的効果を、検査室内の実験的研究および病棟での実地研究で検討した。ベッドサイドテーブルの表面を調査対象とした。実験的研究では、Appeartexで処理した、または未処理の表面の規定面積上に、106 cfu以上の大量の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)または腸球菌を接種した。1時間後、スワブリンス法でサンプルを採取した。Appeartexによる生菌数減少効果は10~103 cfuであった。実地研究では、自然環境下の低レベルでの汚染に対する効果を検討した。患者が使用したベッドサイドテーブルの一定の範囲をAppeartexで処理するか、未処理とした。1日後、接触平板培地でサンプルを採取したほか、フロック加工したナイロン製スワブを2段階で連続的に用いる新規スワブ法によるサンプル採取を行った。Appeartexで処理した表面の細菌数は、無処理の表面と比較して有意に少なかった。Appeartexで処理した表面の細菌数中央値は10 cfu/50 cm2、未処理の表面では20 cfu/50 cm2であった。接触培地法で採取したサンプルの培養で検出された細菌数は、フロック加工したナイロン製スワブを用いる方法で採取したサンプルと比較して有意な差は認められなかった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
患者の療養環境の消毒は近年、MRSAやC. difficileの対策として見直されつつある。本論文のような消毒薬を用いる方法や、気体を部屋全体に充満させる方法などが提唱されている。いずれも一定の効果は認められるが、最大の問題はコストである。本論文で紹介されている消毒薬も、一定の効果、特に残留活性については良好な結果が得られている。しかしながら、他の方法とその費用や効果について比較されておらず、すでにある方法を凌駕する位置づけにあるかどうかを検証する、さらなる研究が必要であろう。

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