「肘から下を露出する」服装規定が地域総合病院の勤務医92名の手指汚染に及ぼす影響

2010.06.30

Effects of ‘bare below the elbows’ policy on hand contamination of 92 hospital doctors in a district general hospital


C.A. Willis-Owen*, P. Subramanian, P. Kumari, D. Houlihan-Burne
*Hillingdon Hospital, UK
Journal of Hospital Infection (2010) 75, 116窶・19
院内感染発生率の低下を図るために、英国保健省はエビデンスがないにもかかわらず、「肘から下を露出する(bare below the elbows)」服装規定を導入した。本研究では、この服装と手指汚染との関連を調査した。地域総合病院に勤務する医師を対象として、前向き観察研究を実施した。左右の指先を培地に圧着させて培養し、そのコロニー形成単位および臨床的に重要な病原菌や多剤耐性菌の存在を評価した。これらの所見と、服装、職階、性別、および診療科との関連を調べた。医師92名中49名が「肘から下を露出する」服装規定に対して意義を唱えており、43名が唱えていなかった。コロニー形成単位数および臨床的に重要な細菌の有無のいずれも、「肘から下を露出する」服装規定不満群と非不満群との間に統計学的有意差は認められなかった。医師の手指の培養から多剤耐性菌は認められなかった。「肘から下を露出する」服装は、医師の指先の汚染の程度または臨床的に重要な病原菌の有無に関連していなかった。医師の服装や患者教育キャンペーンに投資する価値があるかどうかを判定するには、さらなる研究が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
この研究は、結論が先にありき(ネガティブキャンペーンを目的とした報告)でデザインされており、汚染を調べているのは指先のみであることに注目すべきである。つまり、実際の医療行為で生ずる接触伝播についてのすべての可能性に言及していない。よって、この研究を根拠に、肘から下をフリーにするというメッセージが否定されたわけではない。
しかしながら、このように合理的ではあるもののエビデンスが明らかでないことについては、医療従事者の良識としてキャンペーンすればすむ問題であるのに、法的拘束力のある保健省の通知通達として出したのは、医療政策としていかがなものであろうか?
これを他山の石として、我々が院内でさまざまな施策を出すときには、注意したいものである。

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