大学病院の内科および外科の可動式透析ユニットにみられた基質拡張型β-ラクタマーゼ産生エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae):症例対照研究
Extended-spectrum β-lactamase-producing Enterobacter cloacae in mobile dialysis units in the medical and surgical departments of a university hospital: a case窶田ontrol study
E.-B. Kruse*, A. Conrad, S. Wenzler-Rottele, D. Jonas, M. Dettenkofer, M. Wolkewitz, E. Meyer, A. Serr
*Beratungszentrum fur Hygiene, Germany
Journal of Hospital Infection (2010) 75, 33窶・6
今回の症例対照研究の目的は、フライブルク大学医療センターにおける基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)アウトブレイク時の汚染源と、保菌・感染のリスク因子の調査である。ESBL産生E. cloacaeの保菌・感染がみられる内科および外科の患者23例を、病棟と入院期間をマッチさせた非保菌対照患者46例と比較し、リスク因子解析を行った。ESBL産生菌の感染源の疑いのある箇所を調査するとともに、職員に対して感染制御対策の研修を実施した。患者の保菌リスク上昇には可動式ユニットによる透析が寄与していた(オッズ比[OR]4.00、95%信頼区間[CI]1.05~15.234、P = 0.04)。透析ユニットを調べたが、汚染は認められなかった。透析の手技を改善し、職員の研修を追加実施し、新規に標準予防策の研修を行ったところ、症例数が大幅に減少した。リスク因子解析では、保菌患者群は対照群と比較して侵襲性器材の使用率が高く(中心静脈カテーテル:OR 2.50、95%CI 0.74~8.45、P = 0.14;フォーリーカテーテル:OR 5.08、95%CI 0.61~42.23、P = 0.13)、投与された抗菌薬の種類が多かった(ペニシリン系:OR 2.52、95%CI 0.71~8.89、P = 0.15;フルオロキノロン系:OR 2.37、95%CI 0.77~7.28、P = 0.13)。可動式ユニットによる透析の実施率および使用抗菌薬の種類数は、保菌患者群と対照群との間に大きな相違がみられたが、後者は統計学的有意差には到達しなかった。感染制御対策を強化し、業務に携わる職員の研修を行うことによって、高いESBL産生菌保菌・感染率を制御することができた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
可動式ユニットが感染源として疑われ、調査したが疫学的解析結果は有意差を示さなかったという結果である。接触予防策の感染源として、日本では多剤耐性緑膿菌の感染源には尿路カテーテルが関係している場合が指摘されている。今後もESBL関連菌の伝播経路の調査・分析が必要であろう。
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