ノロウイルス感染高齢者におけるノロウイルスの排出期間およびウイルス量の経時変化★★
Duration of norovirus excretion and the longitudinal course of viral load in norovirus-infected elderly patients
Y. Aoki*, A. Suto, K. Mizuta, T. Ahiko, K. Osaka, Y. Matsuzaki
*Yamagata Prefectural Institute of Public Health, Japan
Journal of Hospital Infection (2010) 75, 42窶・6
高齢者ケア施設など半閉鎖的環境におけるノロウイルスの伝播を防止するためには、ノロウイルス感染者が感染性を有している期間を知ることが重要である。この研究では、ノロウイルス胃腸炎に罹患した60~98歳の高齢患者13例(高齢者ケア施設入所者11例、健常成人2例)を対象として、追跡して採取した合計63の糞便検体中のノロウイルスのウイルス量をリアルタイム定量PCR法で測定した。ノロウイルス排出期間の平均値は14.3日(範囲9~32日、中央値13日)であった。症状発現から7~10日後に採取した検体はすべて陽性であった。症状発現から14~18日後に採取した検体中のウイルス量を、陰性、糞便gあたり104コピー未満、糞便gあたり104コピー超の3群に分類した。104コピー/糞便g未満群は症状発現から21~24日後までにノロウイルス陰性となったが、104コピー/糞便g超群ではノロウイルス排出が長期化していた(最長32日)。排出されたウイルスが感染性を有している期間はまだ明確にされていないが、上記の結果から症状発現から少なくとも14日間は細心の注意を払うべきであり、症状発現から約16日後に糞便中のウイルス量を測定することは、ノロウイルス感染者のウイルス排出の経過を追跡する有効な方法であることが示唆された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
HICPACガイドライン(隔離予防策[2007年]、多剤耐性菌管理[2006年])でも隔離を解除する基準が取り上げられているが、詳細に検討するとエビデンスが薄弱であったり、臨床の現場で実践するのが難しい内容であったりする。ノロイウルスについては“罹病期間に接触感染予防策が必要である”と記載されているが、この論文に示されているように下痢症状が消失してもウイルスは排出され続けており、実際的には高齢者や小児を中心に最長2週間ぐらい隔離延長を検討する必要がある。感染管理担当者は、病原体が他の入院患者へ水平伝播する潜在的リスクを検討して、感染制御リスクアセスメント(ICRA;infection control risk assessment)に基づく方針を施設ごとに確立しなければならない。ガイドラインは科学的根拠に基づいて作成されるが、現場で使えるマニュアルに落とし込むにはサーベイランスを含む感染制御リスクアセスメントが必須の過程であることを強調しておきたい。
ちなみに自治医科大学附属病院では、急性下痢症の場合、症状が消失してから1週間をめどに接触感染予防策を継続している。
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