集中治療室内の抗菌薬耐性に対する病院全体の感染率、侵襲的手技の使用、および抗菌薬使用量の影響★

2010.05.30

Impact of hospital-wide infection rate, invasive procedures use and antimicrobial consumption on bacterial resistance inside an intensive care unit


T.S. Jacoby*, R.S. Kuchenbecker, R.P. dos Santos, L. Magedanz, P. Guzatto, L.B. Moreira
*Hospital de Clinicas de Porto Alegre, Brazil
Journal of Hospital Infection (2010) 75, 23窶・7
病院全体の抗菌薬使用量、侵襲的手技の使用、および病院感染が集中治療室(ICU)内の抗菌薬耐性に及ぼす影響を明らかにするために、生態学的研究を30か月間にわたって実施した。研究期間を通して、病院感染症の確定診断を受けたICU患者由来の分離株を調査した。病院全体の100患者日あたりの抗菌薬使用量を1日規定用量(DDD)で表すと、ピペラシリン・タゾバクタムは1.9 DDDから2.3 DDDへ(P < 0.01)、フルオロキノロン系は4.7 DDDから10.3 DDDへ(P < 0.01)、セファロスポリン系は12.1 DDDから16.4 DDDへ(P < 0.01)増加した。ICU患者由来分離株の31.3%(466株)に多剤耐性が認められ、研究期間中にメロペネム耐性クレブシエラ(Klebsiella)属菌(P = 0.01)およびメロペネム耐性アシネトバクター(Acinetobacter)属菌(P = 0.02)が増加した。多剤耐性菌の割合とセファロスポリン系のDDD(P < 0.01)およびフルオロキノロン系のDDD(P = 0.03)との間に正の相関が認められた。セフタジジム耐性Klebsiella属菌の割合とフルオロキノロン系およびセファロスポリン系のDDDとの間、セフタジジム耐性シュードモナス(Pseudomonas)属菌の割合とセファロスポリン系の使用量との間、およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Pseudomonas aureus)(MRSA)の割合とフルオロキノロン系の使用量との間に相関が認められた。試験期間中のICU内の多剤耐性菌の割合の変動のうち、36.9%(P < 0.001)が侵襲的手技の使用、34.5%(P < 0.01)が病院感染の全発生率に関連していた。ICU内の多剤耐性菌の割合は、病院感染の全発生率の変動、病院全体(ICUを除く)の侵襲的手技の使用、および抗菌薬使用量に影響されることが示された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
重症感染症を治療する専門病院において、WHOによる1日規定用量(DDD)を尺度として用いることが適切かどうかの議論は絶えずある。我が国においても同様の手法で多剤耐性緑膿菌とカルバペネム系抗菌薬との関係をもっと明らかにしていくべきである。

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