洗浄消毒器サイクルのシミュレーションによるステンレス製手術器具からの組織蛋白およびプリオンアミロイドの汚染除去を評価するための蛍光二重染色法の適用★

2010.05.30

Application of a fluorescent dual stain to assess decontamination of tissue protein and prion amyloid from surgical stainless steel during simulated washer-disinfector cycles


R.P. Howlin*, N. Khammo, T. Secker, G. McDonnell, C.W. Keevil
*University of Southampton, UK
Journal of Hospital Infection (2010) 75, 66窶・1
医原性クロイツフェルト・ヤコブ病を想定した手術器具の再処理に関する世界保健機関(WHO)の現行のガイドラインは多くの器材に適用できない。そのため様々な汚染除去法が新たに登場してきた。しかし、これらの新しい手法を適用しなくても、外科手術を介した医原性クロイツフェルト・ヤコブ病の発生が確認されることは少ない。この研究では、スクレイピーME7株感染マウスの脳ホモジネートによって汚染した外科手術グレードのステンレス製ワイヤーを用いて、ウォッシャー・ディスインフェクター(熱水洗浄器)のサイクルをシミュレーションして、滅菌サービス部門における現行の汚染除去手順を評価した。汚染乾燥時間の変化およびプリオン除去の前処理サイクルの選択による結果を評価した。高感度の蛍光染色法により総蛋白およびプリオン関連アミロイドレベルを判定して、各サイクル段階での残存汚染を評価した。その結果、前処理段階で酵素洗剤または固化防止予浸液のいずれを使用するかにかかわらず、汚染した後に直ちに再処理することが有効であった。サイクル終了時の最終総蛋白量は、汚染を乾燥させた場合にも有意な相違はみられなかった。また、酵素洗剤あるいは固化防止予浸液を用いた前処理を含むサイクルにより、乾燥の有無にかかわらず、検出可能なプリオンアミロイドは完全に除去された。この試験の結果から、現行の汚染除去法に加えて手術器具を直ちに処理することだけでも、クロイツフェルト・ヤコブ病の外科的伝播リスクを減少させる上で極めて有効である可能性が示唆される。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
クロイツフェルト・ヤコブ病などの原因とされるプリオンは、通常の消毒および滅菌では感染力を完全に除去することはできないと考えられているが、一方、証明された医原性のプリオン感染症はごくごくわずかであり、少なくとも発症前の患者から医療処置を介してプリオンが伝播した事例は確認されていない。なお、プリオン汚染器材の処理について、わが国のガイドラインでは、(1)アルカリ洗剤ウォッシャー・ディスインフェクター洗浄(90~93℃)+ 真空脱気プレバキューム式高圧蒸気滅菌134℃ 8~10分間、(2)適切な洗浄 + 真空脱気プレバキューム式高圧蒸気滅菌134℃ 18分間、(3)アルカリ洗剤ウォッシャー・ディスインフェクター洗浄(90~93℃)+ 過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌2サイクル(NXタイプでは1サイクル)などを挙げている。
適切な医療器具の洗浄・消毒のためには、汚染を長時間にわたって放置しない、適切な前処置により汚染を除去してから消毒する、というのは基本中の基本である。

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