全国的なアウトブレイク時の入院患者におけるカルバペネム耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)保菌率★★
Carriage rate of carbapenem-resistant Klebsiella pneumoniae in hospitalised patients during a national outbreak
Y. Wiener-Well*, B. Rudensky, A.M. Yinnon, P. Kopuit, Y. Schlesinger, E. Broide, T. Lachish, D. Raveh
*Shaare Zedek Medical Center, Israel
Journal of Hospital Infection (2010) 74, 344-349
イスラエルにおけるカルバペネム耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の全国的なアウトブレイク時に、無症候性保菌者がどの程度存在するかを明らかにするために点有病率調査を実施した。次いで後向き症例対照研究を行い、保菌のリスク因子を明らかにするためにカルバペネム耐性K. pneumoniae保菌者と非保菌者を比較した。同意を取得した適格な入院患者全員から、口腔、肛門周囲、および直腸スワブを採取した。カルバペネム耐性グラム陰性菌用の選択培地を用いて、またパルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)によりクローン起源を特定した。298例から培養結果が得られた。16例(5.4%)がカルバペネム耐性K. pneumoniae保菌者であり、内科病棟と外科病棟での保菌率が高かった。本調査前にカルバペネム投与を受けていたのは、保菌者の18%のみであった。保菌者16例中5例では、臨床検体中にカルバペネム耐性K. pneumoniaeが検出されたため、臨床的感染と無症候性保菌の比は1対3であった※。最も感度が高い検査部位は直腸で、16例の保菌者中15例が直腸スワブ陽性であった。本法の全体の感度は94%、陰性適中率は99.6%であった。カルバペネム耐性K. pneumoniae保菌のリスク因子に関する多変量解析で保菌状態と有意な関連を示したのは、おむつの使用、長期間の入院、およびバンコマイシンの使用の3変数であった。PFGEにより、すべての分離株16株が同一であり、単一のクローン起源であることが確認された。カルバペネム耐性K. pneumoniaeアウトブレイク時に1つの病院で実施した点有病率調査から、保菌率は5.4%であることが示された。これらの分離株は単一クローン起源であったことから、隔離手順の厳格な遵守によって今回のアウトブレイクが阻止できる可能性が示唆される。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
日本ではあまり問題になっていないカルバペネマーゼ(=メタロβ-ラクタマーゼ)産生肺炎桿菌の点有病率調査と、これに基づく多変量解析により保菌のリスク解析を行っている。肺炎桿菌は、呼吸器系および消化器系の常在菌の一部であるため、これらの取り扱いについての標準予防策と手指衛生の徹底が、MDRO(多剤耐性病原体)の管理には必須であることが読み取れる。
監訳者注:
※無症候性保菌の定義は原著に明示されていないが、臨床的感染が認められない保菌であると解釈できることから、その数は16例-5例=11例と算出される。したがって、臨床的感染と無症候性保菌の比は5対11、すなわち約1対2であると考えられる。
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