重症患者におけるグラム陰性菌による院内肺炎に対する短期抗菌薬療法★★
Short course antibiotic therapy for Gram-negative hospital-acquired pneumonia in the critically ill
R.J. Pugh*, R.P.D. Cooke, G. Dempsey
*Glan Clwyd Hospital, UK
Journal of Hospital Infection (2010) 74, 337-343
院内肺炎は重症疾患の原因となることが多く、その罹患率と死亡率は高いが、抗菌薬療法の至適な期間は不明である。期間が短い場合は治療無効となる可能性があり、長い場合は抗菌薬耐性が生じて抗菌薬関連合併症と医療費の増加をもたらす可能性がある。当施設のグラム陰性菌院内肺炎に対する抗菌薬療法の標準的な期間は5日であり、現行の多くのガイドラインで推奨されている期間よりかなり短い。当施設の重症管理室で臨床的・微生物学的基準を満たしたグラム陰性菌院内肺炎の全症例を後向きに評価し、短期間の抗菌薬療法後の再発率と死亡率を調査した。グラム陰性菌院内肺炎の適格症例として79例を特定した。このうち79%は診断時に人工呼吸器を使用しており、42%は非発酵性グラム陰性桿菌が原因のグラム陰性菌院内肺炎であり、72%は推奨されている5日間の抗菌薬療法を受けていた。5日間の治療後に、肺炎から回復していないことを示す明確な所見がみられた患者は2例であった。全体の再発率は14%であり、非発酵性グラム陰性桿菌感染患者の再発率は他のグラム陰性菌感染患者と比較して有意に高かった(17%対2%、P = 0.03)。全体の再発率は、既報の再発率(17%縲・1%)を上回っていなかった。重症管理室における死亡率(34.2%)も、既報の死亡率(18%縲・7%)を超えなかった。この研究は限定的なものではあるが、治療終了までに肺炎から回復している場合は、グラム陰性菌院内肺炎に対する適切な抗菌薬を用いた5日間の治療によって、再発または死亡リスクが増加することはないと考えられた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
現在までの臨床研究からは、最適な抗菌薬投与期間についての確立した結論が導き出せていない。これに挑んだレトロスペクティブ研究であるが、日本人医師が好きな「CRPの低下を抗菌薬中止の根拠になどしていない」ことがよくわかる。WBCやCRPの数を基に臨床経過を論じるのは、まさに木を見て森を見ずに等しい。
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