外科集中治療室におけるカルバペネム耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染アウトブレイク★
Outbreak of carbapenem-resistant Pseudomonas aeruginosa infection in a surgical intensive care unit
A. Kohlenberg*, D. Weitzel-Kage, P. van der Linden, D. Sohr, S. Vogeler, A. Kola, E. Halle, H. Ruden, K. Weist
*Charite University Medicine, Germany
Journal of Hospital Infection (2010) 74, 350-357
ドイツの大学病院の外科集中治療室(SICU)でカルバペネム耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)が分離される患者が集積していることを、サーベイランス活動を実施中の感染制御担当者が見いだした。アウトブレイクの調査として記述的分析、カルバペネム耐性緑膿菌が分離された患者15例とカルバペネム感性緑膿菌が分離された患者18例とを比較する症例対照研究、および環境サンプルの採取とパルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)による緑膿菌分離株のタイピングなどを実施した。2006年7月1日から10月31日までのアウトブレイク期間中にSICUで15例がカルバペネム耐性緑膿菌を獲得し、入手可能であった11分離株のPFGEタイピングの結果、2種類のアウトブレイク株のほか、散発性の分離株が存在することが判明した。2種類のアウトブレイク株は、ペニシリン系、セファロスポリン系、カルバペネム系、アミノグリコシド系、およびキノロン系耐性であり、コリスチンのみに感性であった。最も可能性の高い伝播方法は術後創傷ケアの間の患者間交差伝播であり、腹部や胸部ドレーン(オッズ比[OR]64.33、95%信頼区間[CI]5.32縲・99)とキノロン系薬剤による治療(OR 48.37、95%CI 3.71縲・99)がカルバペネム耐性緑膿菌耐性獲得に対する独立したリスク因子であった。接触隔離予防策を実施し、医療従事者が可能性の高い伝播方法を意識するようになってからは、カルバペネム耐性緑膿菌の症例の集積はそれ以上観察されなかった。本研究により、術後の創傷ケアに関連する2種類の菌株の交差伝播など、SICUにおけるカルバペネム耐性緑膿菌の複雑な疫学が示された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
本事例で検出されている分離菌は多剤耐性緑膿菌(MDRP)と考えてよいような耐性パターンを示している。これほど耐性が進んでいなくとも、その一歩手前の耐性緑膿菌が臨床現場ではしばしば分離される。その治療に利用できる薬剤は限られており、ひとたび患者が感染症を発症すると治療に難渋することになる。本菌の交差伝播の防止は重要な課題であり、本研究のように集積が見られる場合は各施設で症例対照研究による疫学調査を行うのが望ましい。その際に参考になる文献である。
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