Clean Hands for Life(命のためのきれいな手)邃「:ソーシャル・マーケティングの手法を用いた大規模多施設多角的な手指衛生キャンペーン★★

2010.03.31

Clean Hands for Life邃「: results of a large, multicentre, multifaceted, social marketing hand-hygiene campaign


L.A. Forrester*, E.A. Bryce, A.K. Mediaa
*Vancouver Coastal Health, Canada
Journal of Hospital Infection (2010) 74, 225-231
医療従事者の手指衛生行動に影響を及ぼす個人要因、環境要因、および組織要因を明らかにするために、Clean Hands for Life(命のためのきれいな手)邃「と称する1年間にわたる多角的な手指衛生キャンペーンを、バンクーバー沿岸地域保健機関(Vancouver Coastal Health)の管轄地域にある急性期ケアおよび長期ケアの36施設で実施した。キャンペーンの内容は、10種類のポスターの順次掲示、2回のポスターコンテストの実施、および複数のキャンペーン促進アイテムの配布であった。ソーシャル・マーケティングの手法を用いてキャンペーンを実施して、その効果をモニターした。評価方法は、品質保証調査、医療従事者調査(ベースライン、キャンペーン中、およびキャンペーン後)、およびフォーカス・グループである。ポスターコンテストで受理された応募件数は合計141件、完了した医療従事者調査件数は5,452件、およびフォーカス・グループの実施回数は14件であった。ベースライン時の手指衛生の重要性および手洗いの目的に関する全般的な認知度は高かった。キャンペーン中およびキャンペーン後のスコアは、ベースラインと比較して、有意差は認められなかった。大半の医療従事者(89.5%)は、石けんと水による洗浄をアルコールハンドジェルよりも好んでいると報告した。自己報告による手指衛生用品の使用率の有意の改善が認められ、特に直接的な患者ケアを行っていない医療従事者で高かった。手指衛生の障壁となっていたのは、設置が不適切なシンク、動線の問題、手指衛生用品の設置が不十分な手洗い場、労働負荷、および時間的制約であった。キャンペーン期間を通じて、施設の支援が得られた。これらの結果から、ソーシャル・マーケティングの手法は、医療従事者の関心を引くために有効なアプローチであることが示された。医療従事者の認知を図ることに大半の力を注いだ手指衛生キャンペーンでは、多角的キャンペーンまたは特定の手指衛生の障壁を標的としたキャンペーンほどの効果は得られない可能性がある。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント
一般的にマーケティングとは、企業が顧客にとって価値のある製品やサービスを提供するのに必要なすべての要素をコントロールして、顧客から信頼を勝ち取り、継続的に成長することを目的とする。一方、ソーシャル・マーケティングとは、社会的問題を解決するために、理念、行動指針への認知と理解を上げ、社会に浸透させるためのマーケティング手法である。公共広告機構(現:ACジャパン)の活動や様々なレベルで展開されているストップ・エイズ・キャンペーンなどが実例である。
医療従事者にとって、手指衛生は最も基本的な感染対策でありながら、現場における実践(アドヒアランス)・遵守(コンプライアンス)の徹底が困難であることから、ソーシャル・マーケティングの手法を導入するべき対象と考えられる。「手をきれいにすると、あなたを守り、あなたの周りの人々を守ることができる。手をきれいにしてくれてありがとう。」などのメッセージを含む、多様なアプローチにより現場の医療従事者における手指衛生の徹底を図る必要がある。

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