4か国の医療関連感染症有病率調査:肺炎および下気道感染症★
Four country healthcare-associated infection prevalence survey: pneumonia and lower respiratory tract infections
H. Humphreys*, R.G. Newcombe, J. Enstone, E.T.M. Smyth, G. McIlvenny, E. Davies, R. Spencer, on behalf of the Hospital Infection Society Steering Group
*Royal College of Surgeons in Ireland, Ireland
Journal of Hospital Infection (2010) 74, 266-270
2006年、英国病院感染学会は医療関連感染症の有病率調査を実施するために、イングランド、ウェールズ、北アイルランド、およびアイルランド共和国の各公衆衛生当局から資金提供を受けた。本稿では、これらの4か国における肺炎および肺炎以外の下気道感染症の有病率を報告する。医療関連感染症の全有病率は7.59%(75,694例中5,743例)であった。これらの感染症のうち900例(15.7%)が肺炎、402例(7.0%)が肺炎以外の下気道感染症であった。両感染症の有病率は男性のほうが女性よりも高く、85歳を超える患者の有病率は35歳未満の3倍であった(P < 0.001)。調査時またはそれ以前の7日間の人工呼吸器装着率は、肺炎患者23.7%、肺炎以外の下気道感染症患者18.2%に対して、研究の全集団では5.2%であった。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)が起因菌であったのは肺炎患者7.6%、肺炎以外の下気道感染症患者18.1%であった(P < 0.001)。クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)による下痢の併発は肺炎以外の下気道感染症患者(4.2%)のほうが肺炎患者(2.4%)よりも多くみられたが、統計学的有意水準には達しなかった。肺炎患者137例(15.2%)と肺炎以外の下気道感染症患者66例(16.4%)は、その他の医療関連感染症を有していた。この結果から、可能な場合は人工呼吸器などの機器の使用を控えることが、感染症の減少に寄与することが示唆される。肺炎以外のMRSAによる下気道感染症の有病率が高かったことから、起因菌を同定する際の特異度が不十分であることが示唆され、またC. difficile感染との関連がみられたことから、抗菌薬のより適切な使用が重要であると考えられる。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
国家的な有病率調査による動向調査は極めて重要である。残念ながら我が国ではこうした取り組みが、いまだ行われていない。米国ではAPICが中心となり、点有病率調査をMRSAやクロストリジウム・ディフィシルで実施している。
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