レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)血清型1バイオフィルムの塩素系消毒薬耐性★

2010.02.28

Resistance of Legionella pneumophila serotype 1 biofilms to chlorine-based disinfection


I.R. Cooper*, G.W. Hanlon
*University of Brighton, UK
Journal of Hospital Infection (2010) 74, 152-159
飲料水システム中のレジオネラ(Legionella)属菌は自治体水道水供給者と消費者に共通する重大な懸念事項である。本菌は、供給飲料水への塩素添加や頻繁な塩素処理サイクルを実施してもヒトにレジオネラ病、ポンティアック熱、市中肺炎を起こすことがあり、扱いが困難なヒト病原体である。飲料水の送水管の材質として一般的に採用されている2種類の物質、すなわち銅とステンレススチールを用いて、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)のバイオフィルム形成とその塩素処理への反応をそれぞれ3日間と3か月間で観察した。培養液として液体培地および滅菌水道水を使用したin vitroの予備試験から、L. pneumophilaは塩素存在下でも28日間は少数が生存可能であることが示された。次に、飲料水の送水に広く使用されているステンレススチールおよび銅の試片上でバイオフィルムを3日間、1か月間、2か月間にわたり形成させた。50 mg/Lの塩素に1時間曝露した直後は、バイオフィルムにコロニーの回復は認められなかったが、数日後では少数のコロニーが再び認められた。1か月後および2か月後のLegionellaバイオフィルムはいずれも、1時間の50 mg/L塩素処理を行っても生存し、かつ形成を持続することができ、最終的にはディスクあたり1×106 cfuを超えた。今回の研究から、L. pneumophilaはバイオフィルムを形成することにより高濃度の塩素への耐性を獲得することが示された。本研究はまた、飲料水の送水にも関係するものである。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント
レジオネラについては、汚染水の飲水と発病の関係については、必ずしも科学的に明らかになっていないし、むしろ汚染した蒸気の肺胞への吸入が主たる病理である。この論文では2種類の水道管につきバイオフィルムから漏れ出てくるレジオネラの潜在的危険性について検討しているが、もしその懸念どおりであるとすれば、地域住民が広範に被害にあうはずである。しかしながら過去のレジオネラ集団感染の報告では、むしろシャワーヘッドなど末端部分の汚染に起因する事例しか報告がない。この理由として、主水管部分では流量が多いので混入したレジオネラが希釈されてしまうのに対し、末端部分では希釈の機会が乏しい可能性が指摘されている。いずれにしても、すべての水道管をシルバーコーティングするわけにはいかないので、レジオネラレベルが基準値を超えないように定期的モニタリングを行い、個別対処を行っていくしか当面の解決策はなさそうである。

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