グルタミン酸脱水素酵素抗原・リアルタイムPCR法による毒素産生性クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の2段階検出法★
Two-step glutamate dehydrogenase antigen real-time polymerase chain reaction assay for detection of toxigenic Clostridium difficile
S.D. Goldenberg*, P.R. Cliff, S. Smith, M. Milner, G.L. French
*Guy’s & St Thomas’ NHS Foundation Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2010) 74, 48-54
現行で普及しているクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症の診断は、酵素免疫測定法による糞便中の毒素A/Bの検出[EIA(A/B)]に依拠している。この方法は感受性が低く偽陰性が多いために満足できるものではない。そこで、グルタミン酸脱水素酵素(GDH)の検出を利用したC. difficile感染症診断のための2段階アルゴリズムの有効性を調査した。GDH陽性検体を対象として、PCR法を用いてC. difficile毒素B遺伝子(tcdB)の検査を行った。C. difficile感染症が疑われる患者から採取した連続した500の糞便検体を対象として、2段階プロトコールによる診断の有効性を、Meridian Premier EIAキットを用いた毒素検出法と比較した。EIA(A/B)またはGDH検査のいずれかの方法で陽性であった検体の標準検査法は、培養細胞による細胞毒性中和法(culture/CTN)とした。500検体中36検体(7%)がculture/CTNで真の陽性と判定された。EIA(A/B)によると陽性検体14、偽陰性22、偽陽性2と判定された。2段階プロトコールでは陽性検体34、偽陽性2、偽陰性2と判定された。EIA(A/B)は感度39%、特異度99%、陽性的中率88%、陰性的中率95%であった。2段階アルゴリズムの診断の有効性はそれよりも高く、それぞれ94%、99%、94%、99%であった。PCR法で陽性を確定する前にGDHによるスクリーニングを実施するほうが、PCR法ですべての検体をスクリーニングするより安価であり、また、ルーチン使用に有効な方法である。C. difficile感染症に対する現行のEIA(A/B)検査は感度が不十分であるため他の方法に変える必要がある。しかし、これによりC. difficile感染症の発生率が見掛け上、変化する可能性があり、全国サーベイランス統計では説明が必要となると考えられる。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
抗菌療法関連下痢症の起因菌として臨床的に最も重要なC. difficileを取り上げている。C. difficileは偏性嫌気性菌でありながら芽胞を産生することから環境を介して水平伝播することとなり、病院感染制御の観点からは最も対応が難しい病原体の1つである。C. difficileは偽膜性大腸炎のような激しい病態から軽症の下痢、さらには下痢を伴わないイレウスや中毒性巨大結腸症から大腸穿孔、原因不明の白血球数増加などの多彩な病態を呈することから、感染制御の観点だけでなく、臨床診断の観点からもより有効な診断方法を確立する必要がある。
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