ウイルス汚染除去のための過酸化水素ガス消毒システムの評価★

2010.01.31

Evaluation of hydrogen peroxide gaseous disinfection systems to decontaminate viruses


T. Pottage*, C. Richardson, S. Parks, J.T. Walker, A.M. Bennett
*Health Protection Agency, Centre for Emergency Preparedness and Response, UK
Journal of Hospital Infection (2010) 74, 55-61
この研究では、高濃度の耐性ウイルスの代用ウイルスを用いて、有機物汚染がある状態とない状態の両方において、一般的に使用されている2種類のガス消毒法の有効性を評価した。MS2バクテリオファージの懸濁液をステンレススチール製の担体の上で乾燥させて、過酸化水素蒸気(HPV)および気化過酸化水素(VHP)※※の2種類の過酸化水素ガス消毒薬に曝露した。病棟環境でこぼれ落ちた血液・体液に存在するウイルスをシミューレーションするために、バクテリオファージをさらに10%および50%のウマ血液の中に懸濁して乾燥させた。担体をガス消毒から一定の時間で取り出し、リン酸緩衝生理食塩水の中で攪拌して、標準的なプラークアッセイ法で定量した。HPV法とVHP法の有効性は、いずれもバクテリオファージの濃度によって変化して、HPV法では最低濃度でのウイルス[107プラーク形成単位(pfu)/キャリア]は10分間で6 log10減少を示したが、最高濃度(109 pfu/キャリア)では45分間を要した。VHP法では6 log10の減少を達成するのに最低濃度では30分間の曝露時間を要したが、最高濃度では60分から90分間であった。懸濁液に血液を加えるといずれの消毒とも有効性が著しく低下した。この研究からバクテリオファージに対するガス消毒の有効性は、ウイルス濃度だけではなく汚染状態にも規定されることが示された。病院で効果的な汚染除去を確実に行うためには、ガス消毒薬を使用する前の効果的な洗浄が、特に体液に高濃度の微生物が存在している場合には重要であることが強調される。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
医療器材の消毒・滅菌については、その有効性を担保するためにも先立って器材が十分に洗浄されていることが必要である。一般的にいうと、適切な洗浄は汚染微生物数を4 log10減少させるとされる。
ちなみに1 log10減少とは1/10すなわち10%とすることであり、2 log10減少とは1/100 = 1%、4 log10減少は1/10,000 = 0.01%、6 log10減少とは1/1,000,000 = 0.0001%とすることを意味する。

監訳者注:
過酸化水素蒸気(hydrogen peroxide vapour):Bioquell、Andover、Hants、英国。
※※気化過酸化水素(vapour hydrogen peroxide):Steris、Basingstoke、英国。

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