ノロウイルスに対する感染制御対策:半閉鎖環境下でのアウトブレイクのシステマティックレビュー
Infection control measures for norovirus: a systematic review of outbreaks in semi-enclosed settings
J.P. Harris*, B.A. Lopman, S.J. O’Brien
*Health Protection Agency, Centre for Infections, UK
Journal of Hospital Infection (2010) 74, 1-9
閉鎖環境下でのノロウイルスのアウトブレイク時の制御対策の有効性に関するエビデンスを評価するために、発表されている査読論文のレビューを行った。レビューの対象として特定した論文は47報であり、この中には2件以上のアウトブレイクを報告している論文も含まれ、解析対象となったアウトブレイクは72件であった。論文から抽出するデータ項目は、発生率、感染者数と感染リスク者数、症例の定義またはアウトブレイクの定義、アウトブレイク制御対策の実施の有無、介入の効果に関する報告とした。データを分析し、異なる環境下で発生したアウトブレイクの相違点、およびアウトブレイク中にみられた制御対策の実施の有無別の相違点を特定した。レビューした論文はいずれも先進国で発生したアウトブレイクの報告であった。感染制御対策の実施が、アウトブレイクの持続期間や全発生率(全環境の合計)または特定環境下の発生率に影響するというエビデンスは認められなかった。アウトブレイクの持続期間中央値は、制御対策が実施された場合は16日間(範囲1~44日)、実施されなかった場合は14日間(範囲2~92日)であった。適切な感染制御法はノロウイルスアウトブレイク制御の鍵となるが、残念ながら現時点の発表論文には特定対策が有効であることを裏づけるエビデンスは見当たらない。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
ノロウイルスの感染対策が効果的だというエビデンスは導き出せていない。初発者発生時の環境汚染や不用意な曝露を受けた患者・職員の対策が二次発症抑止の鍵となるが、より効果的な対策の組み合わせが必要なのかもしれない。
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