アシネトバクター(Acinetobacter):旧知の友にして新たなる敵★★
Acinetobacter: an old friend, but a new enemy
K.J. Towner*
*Queen’s Medical Centre, UK
Journal of Hospital Infection (2009) 73, 355-363
アシネトバクター(Acinetobacter)属菌は、重大な院内感染病原体として1970年代後半に出現したが、その原因の一部として、病院での広域スペクトル抗菌薬の使用増加が想定されている。臨床的に重要な分離株のほとんどはアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)またはその近縁種に属しており、感染の多くは重症患者または衰弱した患者を対象としている集中治療室、熱傷治療室、または高度治療室に集中していた。このような治療室では、特定のA. baumannii流行株による多数の患者の感染または保菌などの大規模なアウトブレイクが発生する恐れがある。近年、特に懸念されている問題は、世界の戦闘地域(イラクやアフガニスタンなど)から帰還する傷病兵の交差感染である。これまではカルバペネム系抗菌薬が感染患者に対する至適な治療法であったが、今日では既存のすべての抗菌薬療法に耐性を示すA. baumannii分離株の報告が増加している。これらの病原体に対してin-vitro活性を示す数少ない新しい抗菌薬(チゲサイクリンなど)による治療を支持するデータは、まだ非常に乏しい。Acinetobacter属菌の多剤耐性株によるアウトブレイクの予防・制御に関する詳細な勧告として、英国健康保護局のものが利用可能である。これらの対策では、抗菌薬処方の方針と監査に加えて、標準的な感染制御手順および予防策の強化を重視しており、乾燥状態および不十分な消毒後にはAcinetobacter属菌が長期間生存することを考慮して患者区域の徹底的な清掃に特に留意している。このような対策にもかかわらず、問題は拡大し続けており、現在世界中の多くの病院からAcinetobacter属菌多剤耐性株によるアウトブレイクが報告されている。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
Dr. Townerは、監訳者の留学先で共同研究やアウトブレイクリサーチなどを行ったclinical scientistであるが、彼の話は非常に魅力的で、またEnglish sense of humourにあふれている。お話として読むのでも、将来の多剤耐性A. baumannii(MDR-AB)の来襲に備えるためにも十分ためになる。
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