病院感染症の起炎菌としての市中獲得型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)★★

2009.12.31

Community-associated meticillin-resistant Staphylococcus aureus as a cause of hospital-acquired infections


R.L. Skov*, K.S. Jensen
*National Centre for Antimicrobials and Infection Control, Denmark
Journal of Hospital Infection (2009) 73, 364-370
過去10年間に市中獲得型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(CA-MRSA)が世界的に出現したことにより、MRSA菌株は大幅な生物学的変化を示しており、MRSA感染症の疫学も変容しつつある。CA-MRSA感染症は、医療関連MRSA(HA-MRSA)とは異なる遺伝子系統の菌株が引き起こす。CA-MRSA菌株は市中において、主に小児と若年成人の皮膚・軟部組織感染症を引き起こす。しかしCA-MRSA菌株は、手術部位感染症、人工呼吸器関連肺炎、および菌血症などの医療関連感染症の起炎菌となることが増えている。病院のMRSA保菌率に対する市中のMRSA伝播の影響を示した数学的モデルが公表されている。市中のMRSA保菌率上昇は、黄色ブドウ球菌菌血症やその他の侵襲性感染症における市中発症型MRSA(CO-MRSA)の増加ももたらしている。このような患者には一般的なMRSAのリスク因子が認められない。こうした変化は、黄色ブドウ球菌が原因と考えられる重篤な感染に対する経験的治療法の選択に大きな影響を及ぼす可能性がある。畜産動物による新たなMRSAリザーバは非常に大規模なものとなる可能性があり、ヒトへの伝播を介在するため、一般的なMRSAと医療関連感染症の原因菌としてのMRSAのいずれの制御に対しても、さらに深刻な脅威となっている。したがってCA-MRSAは重大な懸案事項であり、制御の対象とすべきである。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
Dr. SkovはデンマークにおけるCA-MRSAのコミュニティーアウトブレイクを追跡調査し、健康な成人にも濃厚接触により伝播しうることを突き止めて報告している。彼はヨーロッパにおけるCA-MRSA研究の第一人者であり、順天堂大学の研究グループとも国際的共同研究を行っている。非常にためになる講演記録である。

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