病院における有害事象と管理チャート:新たなパラダイムの必要性★

2009.11.30

Hospital adverse events and control charts: the need for a new paradigm


A. Morton*, A. Clements, M. Whitby
*Princess Alexandra Hospital, Australia
Journal of Hospital Infection (2009) 73, 225-231
病院における経時的な有害事象発生率を示すために、管理チャートを使用することが多くなりつつある。管理チャートは安定的な予測可能なプロセスからの逸脱の検出を目的としてデザインされているため、平均値やそれに関連する時系列データの変動に関する情報を取り扱う場合に、プロセスが安定的で予測可能な状態にあるときから使用するのが適切である。手術部位感染症や手術関連死亡のようなバイナリ・データで表現される有害事象については、まさにその通りである。しかし、患者の転倒、褥瘡、誤投薬、あるいは多剤耐性微生物の新規分離などの事象では、安定的な予測可能な発生率が必ずしも判明しているとは限らない。さらに、抗菌薬使用と多剤耐性菌保菌率についてはデータが存在していないことが多い。このような場合は、データを分析・提示するためには時系列法を用いたほうがよい。スプライン回帰または一般化加法モデルを採用するのが簡便なアプローチである。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
医療の現場においても品質管理の考え方が導入される傾向がある。この論文で言及されているのはシューハート(Shewhart)管理チャートで、一般的な品質管理ツールであり、品質が安定に管理されていることを確認するための経時的なデータを平均値、管理限界の上限および下限とともに図示する。わが国の品質管理の父、W・エドワード・デミングは「数量化できなければ管理することはできない」との言葉を残しているが、継続的な医療関連感染サーベイランスこそが、患者安全を確保する医療品質管理のための第一歩であるということもできる。

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*University of Leicester, UK

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