基質特異性拡張型β-ラクタマーゼをコードするプラスミドに関連する2種類の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)クローンの継時的定着によって発生した新生児病棟における広範なアウトブレイクの根絶★★

2009.10.30

Eradication of an extensive outbreak in a neonatal unit caused by two sequential Klebsiella pneumoniae clones harbouring related plasmids encoding an extended-spectrum β-lactamase


C. Velasco*, J. Rodriguez-Bano, L. Garcia, P. Diaz, C. Lupion, L. Duran, A. Pascual
*Facultad de Medicina, Spain
Journal of Hospital Infection (2009) 73, 157-163
基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)によるアウトブレイクの制御は困難であり、発生した病棟の閉鎖が必要となることもある。28床の新生児部門で2005年8月に始まり7か月間継続したESBL産生K. pneumoniaeアウトブレイクについて報告する。調査期間中に入院した全乳児から週1回、直腸スワブを採取した。すべての手技の調査、接触予防策、徹底した環境清掃、およびセファロスポリン使用の制限を実施した。Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)の勧告に従ってESBL産生を調べ、等電点電気泳動とシークエンシングにより特性を確認した。パルスフィールド・ゲル電気泳動法を用い、分離株の遺伝子型を評価した。プラスミドについても調べた。アウトブレイク中、入院した乳児503例の32%に保菌が認められ、9例が菌血症を発症したが、これらの乳児は全員回復した。このアウトブレイクは2006年2月に終息した。2つの異なるクローンが認められ、最初のクローンは2005年8月から10月、2番目は2005年10月から2006年2月に蔓延した。両クローンはともに非ESBL SHV-11およびTEM-4 ESBLを有していた。TEM-4を有する両クローンのプラスミドは類似しており、分子解析から単一プラスミドの両クローン間での水平伝播が示唆された。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
ESBLをコードした遺伝子はプラスミド上に存在し、形質転換(transformation)により菌種を超えて自由に水平伝達されていく。よって、入院中の患者や環境中の細菌(主に腸内細菌科のグラム陰性菌)にプラスミドが保持されたままだと、これが遺伝子のリザーバとなり、本論文でみられるように異なったクローンへ受け渡される現象が起きる。よって、手指衛生と接触感染予防策、環境整備だけでは制御が困難になるので、必ず第3/4世代セフェム系抗菌薬の適正化を同時に行う必要がある。

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