カテーテル関連血流感染予防のための完全静脈栄養サーベイランス看護師の導入の費用対効果★
Cost-effectiveness of employing a total parenteral nutrition surveillance nurse for the prevention of catheter-related bloodstream infections
M.H. Fraher*, C.J. Collins, J. Bourke, D. Phelan, M. Lynch
*Mater Misericordiae University Hospital, Ireland
Journal of Hospital Infection (2009) 73, 129-134
カテーテル関連血流感染による損失は合併症、死亡、および財源の点で甚大である。完全静脈栄養法(TPN)はカテーテル関連血流感染のリスク因子と考えられている。カテーテル関連血流感染の動向をモニターするため、1997年に静脈栄養看護師をTPNサーベイランス臨床看護マネジャー(TPN surveillance clinical nurse manager)に昇格させ、感染監査委員会の四半期ごとの開催を導入した。535床の大学附属急性期3次病院のTPNの記録を用いて、15年間にわたり前向きにデータを収集した。合計20,439中心静脈カテーテル日、カテーテル関連血流感染307件の記録が得られた。TPNサーベイランス臨床看護マネジャーの導入前後の平均感染件数を比較した。1,000カテーテル日あたりのカテーテル関連血流感染件数の平均 ± SDは1997年以前20.5 ± 6.34、1997年以降14.64 ± 7.81であり、1,000カテーテル日あたり平均5.84件の減少が認められた(95%CI -4.92~16.60、P = 0.05)。1年あたりのカテーテル関連血流感染件数の平均値 ± SDは1997年以前28.3 ± 4.93、1997年以降18.5 ± 7.37であり、1年あたり平均9.8件の減少が認められた(95%CI 0.01~19.66、P < 0.05)。1年あたり9.8件の感染を予防することで得られる削減コストを、病院財務部門から得たベッド使用日数のデータから算出した。1年あたりの入院日数からみたコスト削減は135,000ユーロであった。TPNサーベイランス臨床看護マネジャーの導入により、少なくとも1年あたり78,300ユーロの病院コストが削減され、TPN患者のカテーテル関連血流感染件数が有意に減少した。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
サーベイランス担当看護師が確固たるサーベイランスを行うことにより、CRBSIを減少させることができ、その医療費節減効果は看護師の給料を上回っていたという論文である。この種類の論文で常に問題になるのが、医療費節減効果がそのまま医療施設にとっての利益にならない点である。近年日本においてDPCが採用され、合併症による医療費に対する治療に応じた医療保険償還が行われなくなってきているが、それでも入院期間延長による1日あたりの医療費は定額ではあるが償還される。感染対策によって日本の医療保険制度の下で病院経費削減につながるデータを示すことが、我々にとっての大きな課題である。
同カテゴリの記事
Ventilator-associated pneumonia surveillance using two methods
Tuberculosis infection control in rural South Africa: survey of knowledge, attitude and practice in hospital staff
Disinfection: is it time to reconsider Spaulding?
G. McDonnell*, P. Burke
*STERIS Limited, UK
Journal of Hospital Infection (2011) 78, 163-170
Risk of nosocomial transmission of coronavirus disease 2019: an experience in a general ward setting in Hong Kong
S.C.Y. Wong*, R.T-S. Kwong, T.C. Wu, J.W.M. Chan, M.Y. Chu, S.Y. Lee, H.Y. Wong, D.C. Lung
*Queen Elizabeth Hospital, Hong Kong Special Administrative Region
Journal of Hospital Infection (2020) 105, 119-127