加熱処理済み即食(ready-to-eat)ソーセージに起因する病院および市中リステリア症の長期アウトブレイク★
Prolonged hospital and community-based listeriosis outbreak caused by ready-to-eat scalded sausages
C.H. Winter*, S.O. Brockmann, S.R. Sonnentag, T. Schaupp, R. Prager, H. Hof, B. Becker, T. Stegmanns, H.U. Roloff, G. Vollrath, A.E. Kuhm, B.B. Mezger, G.K. Schmolz, G.B. Klittich, G. Pfaff, I. Piechotowski
*Baden-Wurttemberg State Health Office, Germany
Journal of Hospital Infection (2009) 73, 121-128
リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)は食物媒介性の病原性細菌である。免疫不全患者は侵襲性リステリア症の発症リスクが高く、その致死率は高い。発症前に同一病院(A病院)に入院していたリステリア症患者2例の届け出を受け、著者らはアウトブレイクの範囲の確認、感染源の特定、およびさらなる感染の予防を目的として調査を開始した。積極的症例検出のためにA病院と連絡を取り、カルテレビューを実施し、リステリア症の届け出をドイツのサーベイランスシステム(SurvNet)を用いて後向きに調査した。調理場(A病院)および病院への肉の納入業者(X社)の検査を行い、微生物学的検査のために環境サンプルと食品サンプルを採取した。すべてのL. monocytogenes分離株、および2006年から2008年にバーデン・ヴュルテンベルク州で検出された患者と食品由来の分離株をパルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)により評価した。合計16例のリステリア症症例を特定した。識別不能なPFGEパターン(AscI 17a/ApaI 10)を示す血清型4bが9例で検出されたほか、環境サンプル5件、X社から納入された加熱処理済み即食ソーセージのサンプル3件、およびA病院の食品サンプル2件からも検出された。A病院と関連のあった11例すべてが免疫抑制患者であり、入院中に定期的に食事を支給されていた。これらの患者のうち10例はコルチコステロイドとプロトンポンプ阻害薬(PPI)の投与を受けていた。死亡例は5例であった。今回の調査により、X社の加熱処理即食ソーセージがリステリア症アウトブレイクの原因であることが示された。病院への食品納入業者は最適な品質管理を行い、L. monocytogenesによる即食肉製品の汚染がないことを保証すべきである。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
食物媒介性感染症としてのリステリア症は比較的まれであるが、免疫不全状態の患者ではしばしば致命的になる。冷蔵庫の温度や高塩分濃度の環境中でも増殖することから、加工食品における食物媒介性感染症の原因となりうる。そのことを認識するために有用な論文である。また本論文は、公衆衛生当局が行ったアウトブレイク調査の典型例として一読の価値があると思われる。
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