黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の臨床分離株57株に対する擦式アルコール製剤3種の殺菌効果の評価★★

2009.08.31

Evaluation of the bactericidal efficacy of three different alcohol hand rubs against 57 clinical isolates of S. aureus


K.E. Cheeseman*, S.P. Denyer, I.K. Hosein, G.J. Williams, J.-Y. Maillard
*Cardiff University, UK
Journal of Hospital Infection (2009) 72, 319-325
英国ウェールズの集中治療室2施設で使用されている擦式アルコール製剤3種の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対する有効性を調査した。保菌者検査を基本とした調査プロトコールを作成し、集中治療室での手指衛生行動を観察した後にパラメータ(濃度、接触時間)を選択した。擦式アルコール製剤への曝露後、標準平板菌数測定法とBioscreen C Microbial Growth Analyserを併用して生菌数を計数した。臨床分離株に対する擦式アルコール製剤の有効性にはばらつきがあり、Soft Care Med H5、Cutan、Guest Medicalの各擦式アルコール製剤への曝露後のlog10減少の平均値は、10秒間の曝露ではそれぞれ2.67、0.696、1.96、30秒間の曝露では4.58、1.74、3.60であった。各施設で医療従事者が擦式アルコール製剤による手洗いに費やした平均時間はそれぞれ11秒、15秒であったため、観察された実践状況ではこれらの擦式アルコール製剤の黄色ブドウ球菌分離株に対する有効性はかなり制限されていたと考えられる。さらに、平板菌数測定法とBioscreen法との間にみられた曝露後の細菌数減少(log10)の相違から、Guest Medical擦式アルコール製剤では曝露時間が2分以内の場合に障害を受けた黄色ブドウ球菌が回復する可能性がある一方で、擦式アルコール製剤の5分間の曝露による細菌の障害は不可逆的であるというエビデンスが得られた。擦式アルコール製剤の導入により医療従事者の手指衛生の遵守率は改善したが、今回の観察からこれらの製品の有効性を確保するためには接触時間が重要な要素であることが明らかとなった。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
今回試験された3つの擦式アルコール製剤のうち、すべてが10秒の反応時間で、1つは30秒の反応時間でもブドウ球菌を十分に減菌しなかった。手指衛生にかける時間と、その後のアルコールの手指からの蒸発時間を考えると、10秒で十分な減菌作用を得る必要はないと思われるが、30秒でも十分でなかった製剤についてはその臨床適用において再検討する必要があるだろう。いずれにせよ、十分な反応時間を確保することが擦式アルコール製剤の適正使用において重要であることを、明確に示した論文である。ぜひ一読をお勧めする。

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