急性期病院における医療関連感染:どの介入が有効か?★

2009.04.30

Healthcare-associated infection in acute hospitals: which interventions are effective?


A. Mears*, A. White, B. Cookson, M. Devine, J. Sedgwick, E. Phillips, H. Jenkinson, M. Bardsley
*Healthcare Commission, UK
Journal of Hospital Infection (2009) 71, 307-313
本研究では、国民保健サービス(National Health Service;NHS)の急性期病院における医療関連感染の発生率に関連する潜在因子を検討した。このために、義務的サーベイランスデータおよび保健医療委員会(Healthcare Commission)が利用可能な既存のデータを分析し、特製の質問票で補足した。医療関連感染の管理と制御に関連する重要な要素を対象とした質問票を作成した。他のデータ源からの追加データの照合を行った。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)菌血症およびクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)関連下痢症(CDAD)のアウトカムのデータを義務的サーベイランスデータから収集した。回答率は90%であった。MRSA感染率が低いことは手指衛生および隔離と関連し、CDAD有病率が低いことは清潔度、適切な抗菌薬の処方、および感染サーベイランスと関連していた。両方の感染率がともに低いことは、職員育成プログラムに感染制御を組み入れるなどの戦略的な計画的介入と関連していた。しかし、例えば訓練の水準を上げるなどの特定の介入は、高い感染率と関連した。MRSAとCDADに関する今回の知見は、感染制御に関する文献からのエビデンスにより支持される。介入と高い感染率との関連が認められたことは直観に反するものであるが、高い感染率へのいわゆる「反作用行為(reactive practice)」の例であると考えられる。このような介入は迅速・容易な導入が可能であるものの、低い感染率と関連する戦略的な計画的介入と比較すると持続性に欠けるのかもしれないという仮説には興味をひかれるが、最も可能性が高いのは、組織の体質が変化し始め、感染制御の実践が組み入れられつつあることの明確な表れではないかと思われる。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
様々な医療関連感染対策と、そのアウトカムともいえるMRSAやCDADの率を検討したスタディである。MRSAでは手指衛生、CDADでは適切な抗菌薬の使用など、比較的妥当な関連因子があがってきており、これまでの知見を裏付けるものであろう。一方で、「反作用行為」と呼ばれる、感染対策を行っている施設の率が高いというデータが出ているが、これは例えば訓練の水準を上げたから感染率が上がったわけではなく、原因と結果が逆であり、感染率が上がったため直ちに訓練の水準を上げたためであると解釈できよう。こういった施設の対策と感染率の真の関連を見るためには、長期にわたり感染率を監視していく必要がある。さらに、訓練や教育だけでは感染率の低下という結果を得られないという報告もあり、注意が必要である。

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