中等度リスクの新生児室における基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)のアウトブレイク時の新生児保菌のリスク因子★
Risk factors for colonisation of newborn infants during an outbreak of extended-spectrum β-lactamase-producing Klebsiella pneumoniae in an intermediate-risk neonatal unit
V.C. Cassettari*, I.R. da Silveira, M. Dropa, N. Lincopan, E.M. Mamizuka, M.H. Matte, G.R. Matte, P.R. Menezes
*University of Sao Paulo, Brazil
Journal of Hospital Infection (2009) 71, 340-347
新生児の基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)保菌のリスク因子を明らかにすることを目的とした横断研究について報告する。本研究は、中等度リスクの新生児室でのアウトブレイク時に、保菌者である医療従事者への曝露後に行われた。3か月の間に入室した新生児連続120例に対して直腸スワブによるESBL産生K. pneumoniaeのスクリーニングを行ったところ、27例に保菌が確認された。多変量解析により、保菌は、抗菌薬投与および母乳哺育を行っていないことと独立して関連していることが示された。抗菌薬投与歴のオッズ比(OR)は12.3であった[95%信頼区間(CI)3.66~41.2、P<0.001]。最も投与の頻度が高い抗菌薬は、ペニシリンとアミカシンであった。母乳哺育は保菌のリスク低下と関連した(OR 0.22、95%CI 0.05~0.99、P=0.049)。その後、アウトブレイクの初期段階に回収した分離株9株、およびサーベイランス培養による分離株27株について、パルスフィールド・ゲル電気泳動法によるタイピングを行ったところ、6種類の異なるプロファイル(A~F)が検出された。クローンA、C、およびEはアウトブレイクの初期段階と関連していたが、サーベイランス培養で回収された27株では6種類のクローンすべてが確認された。クローンAは爪真菌症の看護助手の手指にも検出された。著者らは、抗菌薬投与歴が保菌の素因であると結論した。防御因子としての母乳哺育の役割については、さらなる解明が必要である。様々な遺伝子型のESBL産生K. pneumoniaeが検出されたことから、アウトブレイク時に単一クローンの拡散と、ESBL遺伝子を含む可動性遺伝因子の拡散が重複して生じた可能性があることが示唆される。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
ESBL産生肺炎桿菌による集団発生は日本でも時々発生しているものと思われる。本論文はその詳細を症例に関する疫学的解析のみならず分子疫学的手法も併用して紹介している点で、有用であると考える。
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