アルコールによる術前手指消毒:アルコールの種類、使用法、および使用時間の影響

2009.03.31

Surgical hand disinfection using alcohol: the effects of alcohol type, mode and duration of application


M. Suchomel*, G. Gnant, M. Weinlich, M. Rotter
*Medical University Vienna, Austria
Journal of Hospital Infection (2009) 71, 228-233
擦式アルコール製剤は、強力な抗菌作用、即効性、良好な皮膚忍容性、および使いやすさから、外科チームの術前手指消毒に推奨されている。EN 12791のプロトコールを用いて、1-プロパノールと2-プロパノールの混合またはエタノールをアルコール濃度(w/w)73%(プロパノール)~78.2%(エタノール)で主要有効成分として含有する3製品を、使用時間を通常の3分間ではなく1.5分間に短縮して試験した。製剤A(1-プロパノール30%と2-プロパノール45%を含有)は、短時間の使用で基準を満たしただけでなく、3分間の使用では、有意ではないもののEN 12791の対照消毒処置よりも高い有効性を示した。製剤B(1-プロパノール45%と2-プロパノール28%を含有)は必要な基準を満たしたが、製剤C(エタノール78.2%含有)は満たしていなかった(P<0.1)。この結果から、すべてではないものの一部の擦式アルコール製剤は1.5分間の使用でも基準を満たすことが明らかとなり、臨床使用に供する前のバリデーションが重要となったことが示された。製剤Aおよび1-プロパノール60%(v/v)を用いた別の研究では、前腕までを消毒処置の対象とした場合(EN 12791では規定されていないが術前手指消毒では通常の処置)でも、いずれの擦式手指消毒薬の抗菌効果も有意に抑制されないことが認められた。したがって、外科チームの手指消毒ではEN 12791の試験方法を変更する必要はない。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
EN 12791は、外科手術前の手指衛生を評価するヨーロッパ統一基準として定められており、2005年にCEN(Comite Europeen de Normalisation)(本部:ブリュッセル)で決定された。対照となる処置は3 mLの60% 1-プロパノールで手首まで3分間の使用とするもので、EN 12791では手指の残留細菌数の減少率で評価される。外科手術前手指衛生もより短時間で完了できるようになったが、さらに外科手術部位感染症への影響についても検討されるのが望ましい。

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