マイクロファイバークロスによる清掃時の表面細菌の拡散★★
Spread of bacteria on surfaces when cleaning with microfibre cloths
L.K. Bergen*, M. Meyer, M. Hog, B. Rubenhagen, L.P. Andersen
*Copenhagen University Hospital, Denmark
Journal of Hospital Infection (2009) 71, 132-137
院内交差伝播に対する環境汚染の影響はほとんど解明されておらず、デンマークの病院では、目視基準のみで清掃評価を行っている。経済的・人間工学的利点から、デンマークの病院では湿式マイクロファイバークロスを用いた16面法による清掃法が導入されているが、病院清掃での適用性評価は行われていない。著者らは、この方法では細菌が拡散する可能性があるという仮説を立てた。表面を細菌で汚染し(各細菌4 cfu/cm2)、16面を使用できるように折りたたんだ湿式マイクロファイバークロスの1面で清掃した。滅菌表面15面の各面を、マイクロファイバークロスの未使用面で清掃した。清掃後、マイクロファイバークロスで清掃した滅菌表面およびマイクロファイバークロスから捺印サンプルを採取し、実験を12回繰り返した。清掃後に、マイクロファイバークロスの汚染表面からの捺印サンプルの細菌量中央値は、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)45.5 cfu/平板培地、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)2.5 cfu/平板培地であった。マイクロファイバークロスの第2面から第16面までの捺印サンプルの細菌量中央値は、E. faecalis 1~12 cfu/平板培地、B. cereus 0 cfu/平板培地であった。清掃後の汚染表面からの捺印サンプルの細菌量中央値はE. faecalis 45.5 cfu/平板培地で、清掃前から5.6倍の減少を示した。B. cereusの中央値は0 cfu/平板培地であった。清掃後の滅菌表面の第2番から第16番までのE. faecalis細菌量は0.5~7.5 cfu/平板培地であり、滅菌表面15面のうち11~15面への拡散がみられた(P<0.01)。B. cereusは、清掃後の滅菌表面の第2番から第16番までの捺印サンプル180個のうち6個から検出され、いずれも1 cfu/平板培地であった(有意差なし)。本研究から、汚染表面の細菌数は清掃により全体的に減少するが、引き続いて清掃された表面に細菌が拡散することが示唆された。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
面が異なるとはいえ、一枚の大きな布を16か所の清拭に使うと、先に清拭した場所の病原体が後に清拭した場所に移っていくのは当然ともいえる。本論文は、その当然のことを実験によって証明したものであり、結果そのものは驚くに値しないが、科学的手法によりそのことを明らかにした点が評価できる。一読の価値がある。
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