迅速PCR法を用いたスクリーニング法により院内感染メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の発生率は低下するか?

2009.01.31

Can the use of a rapid polymerase chain screening method decrease the incidence of nosocomial meticillin-resistant Staphylococcus aureus?


M.A. Aldeyab*, M.P. Kearney, C.M. Hughes, M.G. Scott, M.M. Tunney, D.F. Gilpin, M.J. Devine, J.D. Watson, A. Gardiner, C. Funston, K. Savage, J.C. McElnay
*Queen’s University, UK
Journal of Hospital Infection (2009) 71, 22-28
病院内のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)伝播を制御するには、迅速なMRSA検出が重要と考えられる。本研究の目的は、迅速PCR法を用いたスクリーニング法と、MRSA保菌を検出するための標準的培養法を比較し、2つの病棟でのMRSA発生率に対する影響を評価することである。研究の第1期(4か月間)では、外科病棟の患者に対しては迅速PCR法を用いたスクリーニングを行い、内科・循環器科病棟の患者には標準的培養法によるスクリーニングを実施した。研究の第2期(4か月間)では、病棟間でMRSAのスクリーニング法を入れ替えた。各期の終了時に、それぞれの病棟の感染制御の実務に関する監査を行い、MRSAの伝播リスクに影響を及ぼす可能性のある何らかの変化が生じたかどうかを調べた。迅速PCR法の使用により、スワブ採取から電話による病棟への結果報告までの時間の中央値(週末を除く)が、47時間から21時間へ有意に短縮した(P<0.001)。しかし、PCR法(20/1,000病床利用日)と培養法(22.1/1,000病床利用日)を用いた場合のMRSA発生率を比較したところ、外科病棟での発生率には有意差は認められなかった(P=0.69)。内科・循環器科病棟については、PCR法を使用した期のMRSA検出数が増加したため、データの解析は困難であった(P<0.05)。本研究から、迅速PCR法により回答時間は有意に短縮したが、スワブ採取から電話による病棟への結果報告までの時間の短縮は、MRSA伝播の低下を図るにはまだ不十分であることが示された。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
監視検査の導入の是非は議論がつかない。比較対照研究を行う上で最も重要なことは、比較項目以外は条件を変えないことであるが、何も変えないで医療を推進することは難しく、行動学からすると接触予防策の遵守率もそろえる必要があろう。

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