フィンランドの急性期病院における医療関連感染患者および非医療関連感染患者の死亡のリスク因子★
Risk factors for death in a cohort of patients with and without healthcare-associated infections in Finnish acute care hospitals
M. Kanerva*, J. Ollgren, M.J. Virtanen, O. Lyytikainen, on behalf of the Prevalence Survey Study Group
*National Finnish Hospital Infection Program (SIRO), Finland
Journal of Hospital Infection (2008) 70, 353-360
死亡の予測を目的として、McCabe分類およびCharlson指標を使用し、医療関連感染を有する入院患者の死亡のリスク因子を評価した。本研究の対象コホートは、2005年のフィンランド全国有病率調査に参加した急性期病院における医療関連感染患者703例と非医療関連感染患者7,531例である。米国疾病対策センター(CDC)による医療関連感染の定義を使用し、併存疾患についてはMcCabe分類で記録した。有病率調査の日付および国民識別コード(national identity code)を用いて、Charlson指標スコア算出のための退院時診断(ICD-10コード)に関する全国病院退院登録(National Hospital Discharge Registry)のデータ、および全国国民情報システム(National Population Information System)の死亡日の情報を収集した。全入院患者のうち、425例(5.2%)は有病率調査日から28日以内に死亡した。死亡率は医療関連感染患者のほうが非医療関連感染患者より高かった(9.8%対4.7%、P<0.001)。多変量回帰解析では、年齢>65歳、集中治療室、McCabe分類・Charlson指標、消化器感染、および肺炎・その他の下気道感染が、死亡の独立予測因子であった。McCabe分類またはCharlson指標で補正した生存分析では、医療関連感染は重度の基礎疾患がない患者においてのみ生存率を低下させることが示された。特定の医療関連感染により死亡リスクが増加した。McCabe分類のほうが有病率調査からのデータ収集が容易なため、Charlson指標よりも死亡予測因子としての有用性が高かった。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
医療関連感染による死亡のリスク因子の詳細な解析を行った論文である。結論のひとつであり、基礎疾患をもつ患者においては医療関連感染発生の有無による死亡リスクの差がないという点については、医療関連感染以外で死亡する人が多いため、差が出にくいという面もあるであろう。基礎疾患をもつ患者が医療関連感染のリスクが高い、さらに死亡のリスクが高いと感覚的には考えやすいが、疫学的にはこのような評価になるところが興味深い。
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