オーストラリアのクイーンズランド州における2000年から2006年のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の疫学的変化:感受性タイプの受動的サーベイランスの実施★
Changing epidemiology of meticillin-resistant S. aureus in Queensland, Australia, 2000-2006: use of passive surveillance of susceptibility phenotypes
G.R. Nimmo*, J. Fong, D.L. Paterson, M.-L. McLaws
*Pathology Queensland Central Laboratory, Australia
Journal of Hospital Infection (2008) 70, 305-313
近年、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染の疫学的特性は、市中感染症を引き起こす新たなMRSA菌株の出現により著しく変化している。今日ではこれらの菌株は医療関連感染症の原因となりつつある。臨床や公衆衛生活動に指針を与えるには、このような変化を追跡できる必要がある。本論文では、2000年から2006年のMRSA主要流行株に相当する表現型の菌の変化を追跡することを目的とした、クイーンズランド州の民間の臨床検査室の全感受性データの受動的サーベイランスについて報告する。入院患者のMRSA分離率は、膿・組織・体液検体および血液培養検体でそれぞれ26%、35%低下した。入院患者の膿・組織・体液および血液培養からのAUS-2/3様表現型(ST239-MRSA-IIIに相当)の分離率は、100万延べ患者・日あたり651件から242件に減少したが、非多剤耐性MRSA(市中MRSA株に相当)は71件から315件に増加した。外来患者の膿・組織・体液および血液培養からの全MRSA分離率は、それぞれ224%、31%増加した。外来患者の膿・組織・体液からのAUS-2/3様表現型の分離率は、100万外来診療機会あたり131件から60件に減少したが、非多剤耐性MRSAの分離率は52件から490件に増加した。ルーチンの感受性データから得られた表現型のサーベイランスは、広範な地理的領域でのMRSAの疫学的変化を追跡するうえで有用な手段である。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
わが国ではいまだCA-MRSAの報告頻度は低いが、1990年代以来オーストラリアでCA-MRSAが増加し、その後は米国、次に欧州へと飛び火している。いずれはわが国でも問題になってくると予想されるので、同様のスタディはわが国においても実施されるべきであろう。
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