エンテロコッカス・ガリナラム(Enteroccocus gallinarum)の院内アウトブレイク:まれな腸球菌菌種の性状★
Nosocomial outbreak of Enteroccocus gallinarum: untaming of rare species of enterococci
G.A. Contreras, C.A. DiazGranados, L. Cortes, J. Reyes, S. Vanegas, D. Panesso, S. Rincon, L. Diaz, G. Prada, B.E. Murray, C.A. Arias
Universidad El Bosque, Colombia
Journal of Hospital Infection (2008) 70, 346-352
コロンビアの三次医療教育病院で2004年5月にバンコマイシン耐性エンテロコッカス・ガリナラム(Enteroccocus gallinarum)(VREG)感染の異常な増加が認められた。これを受けて、本菌による感染に関連するリスク因子を特定するために、症例対照研究が企画された。VREGの全分離株に対して、抗菌薬感受性試験、バンコマイシン耐性遺伝子検出、およびパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)タイピングを実施した。さらに、E. faecalisの獲得性pathogenicity island※に関連する遺伝子およびE. faeciumのhyl様遺伝子の存在をハイブリダイゼーション法で評価した。2004年5月から6月に11例のVREG症例を特定した。VREGは血液(4例)、術中分泌物(4例)、副鼻腔分泌物(1例)、肺膿瘍(1例)、および尿(1例)から分離された。VREG感染は粘膜炎、血液内科病棟および外科治療室への入院、培養前の入院期間、および培養前30日以内の侵襲的処置と関連していた。ロジスティック回帰により、女性であることおよび外科治療室への入院が、VREG感染の独立したリスク因子であることが判明した。分離株はすべて、vanC1遺伝子を有し、PFGEで区別できない制限酵素切断パターンを示すE. gallinarumであった。病原性に関連する遺伝子は検出されなかった。本稿は、VREGの病院内アウトブレイクの初めての報告であり、まれな腸球菌菌種で院内伝播が起こりうることを明らかにしたものである。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
いわゆるVRE、つまりバンコマイシン耐性E. faecalisやE. faeciumと異なり、バンコマイシン耐性E. gallinarumのもつバンコマイシン耐性遺伝子・VanCはバンコマイシンに対して低度耐性を示し、また健常人からもしばしば分離される。このことから、バンコマイシン耐性E. gallinarumは医療関連感染集団発生の原因や対策の必要な菌として焦点があてられないことが多い。本事例および論文は、そういった常識に一石を投じるものであり、短期間に同じ菌による集団発生が起こった場合にはVREGであっても対策が必要であると言える。
監訳者注:
※pathogenicity island:当該の菌に由来しない外来性の遺伝子群で、病原性の発揮に関与するもの。
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