KISSの10年間:成功のための最重要要件★

2008.10.15

Ten years of KISS: The most important requirements for success


Petra Gastmeier*, Dorit Sohr, Frank Schwab, Michael Behnke, Irina Zuschneid, Christian Brandt, Markus Dettenkofer, Iris F. Chaberny, Henning Ruden, Christine Geffers
*University Medicine in Berlin, Germany
Journal of Hospital Infection (2008) 70 (S1), 11-16
10年前の1997年1月にドイツにおける国家的な病院感染サーベイランスシステムが創設された。このシステムはKISS(Krankenhaus Infektions Surveillance System)という略称でよく知られている。その後、KISSは人工呼吸器関連肺炎、原発性(すなわち血管内留置カテーテル関連)血流感染症、外科手術部位感染症に関する継続的なサーベイランス活動および利用者への適切なフィードバックの有用性について、ベンチマークとして参照するべきデータとともに示してきた。集中治療部門および、手術部門、新生児集中治療部門の領域では、3 年間で20%から30%という顕著な感染率の低下が認められている。
これらの経験から、長期間にわたりサーベイランスシステムの成功を維持するためには、参加施設間の密接な連絡、新たな動向の検討、データの適時かつ定期的なフィードバックとデータ提示方法の継続的再評価、データの妥当性、および医療関連感染の減少に寄与していることの実証、などの要件を満たす必要がある。この論文は、これらの要件を満たすためにKISSがいかに努めているかを詳細に記載している。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
国家的な医療関連感染症サーベイランスシステムとしては、米合衆国におけるNNIS(National Nosocomial Infection Surveillance)が有名であったが、2004年からは透析医療関連サーベイランスネットワーク(DSN;Dialysis Surveillance Network)、医療従事者職業安全関連サーベイランスシステム(NaSH;National Surveillance System for Health Care Workers)とともに、国家的医療安全ネットワーク(NHSN;National Healthcare Safety Network)に統合されている。わが国でも厚生労働省によるJANISや外科手術部位感染症サーベイランスとして成果を挙げたJNISがあり、さらにJNISは2009年からJHAIS(Japanese Healthcare-Associated Infections Surveillance)として医療器具関連感染サーベイランスも含めた体制に移行している。このようなサーベイランスシステムの構築は患者安全・医療安全の推進および政策立案の基礎データとして極めて重要である。その一方、サーベイランスの本来的な目的は現場への情報還元・フィードバックによる継続的な質改善運動であり、数字が独り歩きしないように注意しなければならない。
ちなみにsurveillanceの発音からすると、”サーベイランス”ではなく“サベイランス”と記載した方が納得できるような気もするが。

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