手指衛生遵守のモニタリング:米合衆国から現在の展望★

2008.10.15

Hand hygiene compliance monitoring: current perspectives from the USA


John M. Boyce*
*Hospital of Saint Raphael, Connecticut, USA
Journal of Hospital Infection (2008) 70(S1) 2-7
手指衛生遵守のモニタリングと医療従事者への手指衛生活動に関するフィードバックは、手指衛生を推進するプログラムの成功に不可欠な要素であると考えられている。現時点でゴールドスタンダードとされるのは、訓練された職員による医療従事者の直接観察である。その利点としては、手指衛生が適切なタイミングで実施されているかを判定できること、医療従事者の職種別に遵守率を確認できること、さらには手指衛生の方法それ自体を評価できることなどがある。しかし、観察調査には時間がかかり、観察可能なのは手指衛生の機会の一部に過ぎず、評価者間の信頼性に左右される可能性がある。また、遵守の基準や観察方法が標準化されていないため、観察調査から得られた遵守率の比較には問題がある。手指衛生遵守の自己報告は信頼性が不十分であり、調査を有意義なものとすることはできない。手指衛生製品使用量のモニタリングに要する時間ははるかに少なく、継続的な実施が可能であり、より簡便である。しかし、手指衛生実践の適切性および質に関する情報や、医療従事者の職種別の遵守率は得ることができない。さらに、製品の使用量が観察調査で確認された遵守率とどのように相関するのか明らかではない。また、電子機器による遵守のモニタリング方法をルーチンに推奨できるようになるためには、さらなる評価が必要である。効率的で信頼性があり、再現可能な手指衛生遵守のモニタリング法を開発するには、さらなる研究が必要であることは明らかである。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
感染管理は “手指衛生に始まって手指衛生に終わる” といってもよいかもしれない。感染管理にとって手指衛生はフナ釣りのようなものであるが、その遵守実践率を確認することすら難しい。ところで、患者に対する服薬指導など、継続性を維持すべき場面において、最近ではコンプライアンス(compliance)よりもむしろアドヒアランス(adherence)という用語が使用されることが多くなっている。文字通りの意味は “接着性・粘着性”ということであり、より積極的で主体的な実践が念頭に置かれている。遵守(compliance)から習慣(adherence)へ、医療従事者の動機付けは今後も重大な課題であり続けるであろう。

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