ブルガリアの病院における基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)アウトブレイク★

2008.09.30

Extended-spectrum β-lactamase-producing Serratia marcescens outbreak in a Bulgarian hospital


D. Ivanova*, R. Markovska, N. Hadjieva, I. Schneider, I. Mitov, A. Bauernfeind
*Second Multiprofile Active Treatment Hospital, Bulgaria
Journal of Hospital Infection (2008) 70, 60-65
ブルガリアの大学病院の4病棟で9例の患者に発生した基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)による院内アウトブレイクを報告する。分離株の表現型解析および遺伝子型解析[プラスミド・プロファイル、ランダム増幅DNA多型性(RAPD)解析、およびリボソームDNA増幅制限解析(ARDRA)]から、単一クローンの存在が示された。この流行株はオキシイミノβ-ラクタム系、アズトレオナム、アミノグリコシド系、テトラサイクリン、およびクロラムフェニコールに耐性を示した。等電点電気泳動法、CTX-M PCR-RFLP(制限酵素断片多型性)、および遺伝子配列決定により、分離株はCTX-M-3型ESBLを産生することが示された。また、この分離株は環境中および看護師の手指からも検出されたことから、スタッフの手指を介した伝播が示唆された。今回のアウトブレイクは、患者の隔離と手洗いの強化によって制御することができた。この論文は、ブルガリアにおけるCTX-M-3型ESBL産生S. marcescensによる院内アウトブレイクの初めての報告である。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)は国内では幸いまだ少ないが、欧米ではTEM-1やTEM-2、SHV-1型に由来するタイプが多く、CTX-M型はToho-1型、Toho-2型とともに国内から認められる。第3世代セフェム系やモノバクタム系(アズトレオナム)に耐性を示す場合にはESBLを疑う必要がある。
ESBL産生グラム陰性桿菌は、この報告のように、その感受性によってカルバペネム系やキノロン系の抗菌薬で治療されるが、感染制御リスクアセスメントに基づき接触感染予防策の適応を検討しなければならない。

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