外科医による手術室での針刺し損傷の報告:過少報告されているのか?★★

2008.09.30

The reporting of needlestick injuries sustained in theatre by surgeons: are we under-reporting?


E. Au*, J.A. Gossage, S.R. Bailey
*Maidstone Hospital, UK
Journal of Hospital Infection (2008) 70, 66-70
外科医は手術中に針刺し損傷を経験する頻度が高い。この研究の目的は、1施設における針刺し損傷の発生率と報告率を評価することである。英国の地域総合病院の全職階・専門科の外科医69名に匿名の質問票を配布し、42名(60.9%)が回答した。2年間で840件の針刺し損傷が発生しており、その126件は出血を来していた。1週間あたりの手術時間が長い年長の外科医は、若年の外科医と比較して針刺し損傷の発生率が高かった(2年間で1人あたり29.1件対6.59件)。針刺し損傷の全事例のうち、外科医の回答によれば19件(2.26%)が労働衛生部門(Occupational Health)に報告されたことになっていたが、労働衛生部門の記録では報告は6件のみであった。若年の外科医は年長の外科医よりも針刺し損傷の報告率が有意に高かった(9.82%対1.10%、P=0.0000045)。針刺し損傷を報告しなかった主な理由は、時間不足や過剰な事務処理であった。外科医の73%が手術中に二重手袋をルーチンでは使用しておらず、その主な理由は手の感覚が鈍るためであった。この施設の外科医による針刺し損傷の報告率は極端に低い。過去の研究では比較的高い報告率が示されていることから、血液媒介感染を認識しているにもかかわらず、外科医は依然として推奨プロトコールに従っていないことが示唆される。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
医療従事者の職業感染対策において針刺し・切創による血液・体液曝露は極めて重大な課題でありながら、受傷者が報告しなければ発生を確認することができず、現在までその実態は明らかになっていない。とくに手術室からの報告は不十分であると考えられており、この報告でも明らかになっているように過少報告(under-reporting)であると推定される。
あなたの施設では針刺し・切創の何%が手術室から報告されているであろうか? また、職種別に外科医が占める割合はどれくらいであろうか?

同カテゴリの記事

2012.04.29

Infection control systems in transition: the challenges for post-Soviet Bloc countries

2006.05.31

Reduction in MRSA environmental contamination with a portable HEPA-filtration unit

2024.12.17
Longitudinal two-year comparative genomic analysis of respiratory Staphylococcus aureus isolates from intensive care unit mechanically ventilated patients

S. Meyer*, A.C. Hernandez-Padilla, A-L. Fedou, T. Daix, D. Chainier, M-C. Ploy, P. Vignon, B. François, O. Barraud
*UMR INSERM 1092, Université de Limoges, France

Journal of Hospital Infection (2024) 154, 37-44

2018.01.31

Universal decontamination of hospital surfaces in an occupied inpatient room with a continuous 405 nm light source

2019.04.15

Critical points in the pathway of antibiotic prescribing in a children’s hospital: the Antibiotic Mapping of Prescribing (ABMAP) study