メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症有病率が高い病院における髄液シャント設置時のバンコマイシンおよびセファゾリン予防投与の比較★★
Vancomycin versus cefazolin prophylaxis for cerebrospinal shunt placement in a hospital with a high prevalence of meticillin-resistant Staphylococcus aureus
E. Tacconelli*, M.A. Cataldo, A. Albanese, M. Tumbarello, E. Arduini, T. Spanu, G. Fadda, C. Anile, G. Maira, G. Federico, R. Cauda
*Catholic University, Italy
Journal of Hospital Infection (2008) 69, 337-344
国際的なガイドラインでは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症有病率が高い場合は、手術時にバンコマイシンの予防投与を実施すべきであるとしている。髄液シャント設置時の予防的抗菌薬として、バンコマイシンおよびセファゾリンの有効性と有害事象を比較するために、前向き無作為化臨床試験を実施した。MRSA感染症有病率が高い大学病院で、16か月間に髄液シャントを設置した成人の全連続症例を対象とした。患者をバンコマイシンまたはセファゾリンを術前投与する群に無作為に割り付け、感染症の発生を4週間追跡した。本試験の対象患者176例中88例にバンコマイシン、88例にセファゾリンを投与した。バンコマイシン群の患者は、シャント感染発生率が有意に低かった(4%対14%、P=0.03)。すべてのブドウ球菌分離株がメチシリン耐性であった。術後感染患者の死亡率はセファゾリン群のほうが高かった(P=0.02)。著者らのデータから、MRSA有病率が高い施設では、髄液シャント設置時にバンコマイシンを予防投与することにより、シャント感染発生率が低下することが示唆される。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
MRSAのprevalenceが高い施設において、バンコマイシン(VCM)をprophylaxisとして用いることの是非を検討した論文である。確かに全黄色ブドウ球菌に占めるMRSAの分離比率が“高い”病院では、VCMを積極的に処方することがよさそうではある。しかしながら、“高い”というのは、何%をもっていうのかがいまだ不明な点である。いまだ十分な科学的な考察はされていないので、この点の検討が待たれる。
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