電子サーベイランスシステムの妥当性:システマティックレビュー★

2008.07.31

Validity of electronic surveillance systems: a systematic review


J. Leal*, K. B. Laupland
*University of Calgary, Canada
Journal of Hospital Infection (2008) 69, 220-229
データベースに蓄積された情報を利用する電子サーベイランスは、従来の感染サーベイランス手法より効率的であるが、その妥当性について十分には明らかにされていない。この研究では、電子サーベイランス法と従来のサーベイランス法の有効性を比較した研究のシステマティックレビューを行った。Medline(1980年から2007年)と文献レビューにより論文を特定して、電子サーベイランスの感度と特異度を従来のサーベイランス法と比較している24件の研究を対象とした。6件の研究は、微生物学的データのみを用いて、全般的に良好な感度(63%~91%)と優れた特異度(87%~>99%)で院内感染の検出ができたと報告していた。2件の研究は、検査室データに基づく3つのアルゴリズムを用いて、感染アウトブレイクを検出しており、その有効性の指標にはばらつきがあった(感度43%~91%、特異度67%~86%)。7件の研究では、退院診断コード(ICD-9-CM)、薬局データ、および請求データベースなどの管理データのみを用いて、良好な感度(59%~96%)と優れた特異度(95%~>99%)で院内感染を検出できていた。6件の研究では、感染症にかかわる検査室データと管理データを組み合わせることによって、全般的に高い感度(71%~94%)が得られたが、特異度はいずれかのデータを単独で用いた場合より低かった(47%~>99%)。3件の研究では市中感染に関して評価されたが、結果にはばらつきがあった。電子サーベイランスには、院内感染に対する従来のサーベイランス手法と比較して中等度以上の優れた有効性がある。電子アルゴリズム、特に市中感染用のものをさらに改良するためには、今後の研究が必要である。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
論文本文の最初にもあるように、「サーベイランスとは、罹患率と死亡率を低下させて医療を改善するための公衆衛生的な活動に用いるために、医療に関連したイベントに関するデータを継続的、体系的に収集することと定義される」ことから、単にデータを収集して医療関連感染症の発生率を求めるだけでは不十分であるが、医療関連感染率を継続的に測定するのは極めて困難である。余裕をもったサーベイランス活動の継続のためには、電子診療記録システムを利用して、効率よく発生率を求めることが望ましい。この論文では、複数の報告を比較吟味して、方法論を議論している。微生物学的データ、処方データ、医療費管理データなどの電子データシステムを利用したサーベイランスの方法論を確立すべき時期に来ている。

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