病院の環境表面の清掃の評価のためのATPベンチマークの修正★
A modified ATP benchmark for evaluating the cleaning of some hospital environmental surfaces
T. Lewis*, C. Griffith, M. Gallo, M. Weinbren
*University of Wales Institute, UK
Journal of Hospital Infection (2008) 69, 156-163
病院清掃は、患者、メディア、および世論の注目を集め続けている。英国では病院清掃の評価は依然として主に目視検査によって行われているが、この方法は判断を誤る可能性がある。このため、表面の清浄度を評価するためのより客観的な手法が求められている。病院清掃の管理を改善するため、アデノシン三リン酸(ATP)と微生物学的分析の併用が提唱されており、検査と装置の併用1回あたりの一般的なATPベンチマーク値は500相対発光量(RLU)とされている。本研究では、1,300床の教育病院でルーチンの清掃プロトコールおよび変更後の清掃プロトコールを実施した後に同様の併用検査を行い、清掃の効果を評価した。ATP検査の結果に基づいて、本研究で使用した種々の表面に対する合否判定のベンチマークを250 RLUへ強化することを提唱する。この値は修正した最良の清掃方法によってルーチンに達成することができた。また修正した清掃方法により表面細菌数の減少が認められ、例えば好気性細菌コロニー数は<100 cfu/緕から<2.5 cfu/緕に、黄色ブドウ球菌数は最大2.5 cfu/緕から<1 cfu/緕に減少した(それぞれ、サンプルの95%が到達した数値)。ベンチマーキングは質改善の促進につながり、本来の提唱値である500 RLUと修正値である250 RLUのいずれも、病院がベンチマーキングの過程の一環として使用できる。これらの値は国民保健サービス(NHS)での使用が見込まれるスチーム清掃やマイクロファイバークロスなどの新しい清掃方法の評価にも使用することができる。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
このような精密検査は、各病院がルーチンに行う検査ではなく、quality controlの監査の一環として、年に1から2回程度実施するときに用いる。このほかには、隔離室やClostridium difficile感染症後の病室など、terminal cleaningの完了評価に用いるとよいであろう。このような詳細な検査が生まれる背景には、環境がリザーバーとなるC. difficileやAcinetobacter baumannii感染症が欧州を中心に猛威を振るっていることが考えられる。
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