イランの2病院施設で患者および職員から分離したメチシリン耐性黄色ブドウ球菌株の分子疫学的解析
Molecular fingerprinting of meticillin-resistant Staphylococcus aureus strains isolated from patients and staff of two Iranian hospitals
M. Nikbakht*, M.R. Nahaei, M.T. Akhi, M. Asgharzadeh, S. Nikvash
*Tabriz University of Medical Sciences, Iran
Journal of Hospital Infection (2008) 69, 46-55
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は病院感染の重要な起因菌である。MRSA分離株のタイピングおよび疫学的調査の方法は、MRSA株、感染源、伝播形式の同定、およびこれらの病原体の制圧に重要な影響を及ぼす。この研究の目的はDNA多型性ランダム増幅(RAPD)-PCR法によるMRSA分離株の分子多様性、RAPD-PCR法とMRSA分離株の抗菌薬耐性パターンの判定によるサーベイランスの有効性について検討することである。2004年から2005年の6カ月間に、Imam Khomeini病院と小児病院の職員および入院患者460名の臨床検体と鼻腔からMRSA分離株を収集した。PCR法でmecA遺伝子の存在を確認したMRSAの80株について5種類のプライマーによるRAPD-PCR法を実施して、その結果を樹状図にまとめて分離株間の関係を明らかにした。また、MRSA分離株の抗菌薬耐性パターンを、米国臨床検査標準化協会(CLSI)のガイドラインに従って、13種類の抗菌薬ディスクにより寒天平板拡散法で判定した。43 種類のRAPD-PCRプロファイルが検出された。MRSA分離株は類似度50%の18分類のクラスターを形成して、判定した分離株の不均一性を示していた。MRSA分離株は41種類の抗菌薬耐性パターンに分類された。抗菌薬耐性パターンとRAPD-PCR法の結果には相関が認められた。MRSA分離株の多くは多剤耐性であった。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
MRSAは世界の悩み。なお、MRSA分離株の遺伝型(genotype)解析には、広く知られているパルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)だけでなく、この論文で取り上げられた DNA 多型性ランダム増幅(RAPD)-PCR法やmultiple-locus variable-number tandem repeat assay (MLVA)解析、プラスミド分析などがあり、疫学的調査にあっては抗菌薬耐性パターンのような表現型(phenotype)解析だけでは不十分である可能性もあるので注意が必要である。また、逆にPCR法でmecA遺伝子の存在が確認されても、PBP 2’が発現していなければ表現型はMSSAである場合があり、解析方法によって結果の解釈にも重大な影響があることを知っておく必要がある。
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