三次医療施設でのUSA300型MRSAクローンの出現:疫学研究の意義★
Emergence of USA300MRSA in a tertiary medical centre: implications for epidemiological studies
M. Patel*, K.B. Waites, C.J. Hoesley, A.M. Stamm, K.C. Canupp, S.A. Moser
*University of Alabama at Birmingham, Alabama, USA
Journal of Hospital Infection (2008) 68, 208-213
市中関連型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(CA-MRSA)は、特に皮膚軟部組織感染(SSTI)のアウトブレイクの主要な病原体となっている。2004年に著者らの施設で実施した予備的研究では、入院患者および外来患者由来MRSA分離株のうち、それぞれ45%、70%がUSA300遺伝子型であった。この報告では、パルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)を用いた後向き解析により、USA300型CA-MRSAが市中から入院患者集団に伝播した時期の判定を行った。2000年から2004年の5年間にわたって、外科系と内科系の集中治療室(ICU)入室患者、一般病棟入院患者、および外来患者から分離した特定のMRSA株(253株)を対象とした。2000年から2003年のすべての集団で高頻度に検出されたPFGEパターンは、USA100型、USA200型、およびUSA600型であった。USA300型は2000年から2003年には、いずれの入院患者からも検出されず、外来患者で散発的に検出されたのみであった。しかし2004年には、USA300型株は外来患者および入院患者の両方で出現した。ICUと一般病棟の入室患者間にUSA300型の分布の相違は認められなかった。CA-MRSAの出現により、著者らの施設の医療関連感染由来MRSA株の疫学的様相に変化が生じた。このような変化は入院患者におけるMRSA伝播の判定にPFGEを使用することに影響を及ぼしている。より病原性の強い表現型を有するCA-MRSAの入院患者集団での伝播を監視するために、さらに判定能力が高いタイピング法が必要かどうかを判定するには、これらのデータをこのような感染の疫学的視点からより深く評価する必要がある。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
米合衆国では市中関連型MRSA(CA-MRSA)が病院内にも入り込んでいる。ちなみに米国でいうCA-MRSAとは、この論文にあるように、パルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)パターンがUSA300型、パントン・バレンタイン・ロイコシジン(PVL)陽性、耐性遺伝子がSCCmec type IVという特徴を有する特別なMRSAであり、単に病院からあふれ出て市中で認められるMRSAというわけではない。なお、PFGEに代わるMRSAの遺伝子型解析にはmultiple-locus variable-number tandem repeat assay(MLVA)解析やプラスミド分析などがある。
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