集中治療室における基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生大腸菌およびKlebsiella属菌による血流感染の危険因子の評価:抗菌薬の管理および臨床転帰★
Evaluation of risk factors for the acquisition of bloodstream infections with extended-spectrum β-lactamase-producing Escherichia coli and Klebsiella species in the intensive care unit: antibiotic management and clinical outcome
R.J. Cordery*, C.H. Roberts, S.J. Cooper, G. Bellinghan, N. Shetty
*University College London Hospitals, UK
Journal of Hospital Infection (2008) 68, 108-115
集中治療室(ICU)における基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌感染の危険因子、および感染後の臨床転帰を検討している比較対照試験は、極めて少ない。本研究の目的は、ICUにおけるESBL産生菌獲得の危険因子を明らかにし、重症度および即時の適切な抗菌薬投与の有無で補正したESBLおよび非ESBL血流感染患者の死亡率を比較することである。2004年3月から2006年5月に、ICUで後向きコホート研究を実施した。ICUのESBL産生大腸菌またはKlebsiella属菌による全血流感染成人患者16例を症例とし、ICUの非ESBL産生大腸菌またはKlebsiella属菌による血流感染患者39例を対照とした。疾患の重症度は、APACHE(Acute Physiology and Chronic Health Evaluation)およびSOFA(Sequential Organ Failure Assessment)スコアで測定した。転帰は退院またはすべての原因による死亡として記録した。個々の危険因子とESBL産生菌との間には統計学的に有意な関連は示されなかったが、症例患者では適切な治療の遅延が多く(OR 9.17、95%CI 2.00~42.20、P=0.0005)、生存推定値からは早期(感染後25日未満)の死亡率の有意な増加が示された(死亡のOR 3.93、95%CI 1.05~14.63、P=0.03)。ICUの死亡率は、疾患の重症度および適切な抗菌薬投与で補正しても有意であるが、この結果は症例が少数のため(2年で16例)、慎重に扱う必要がある。著者らは、ICUのリスクのある全患者に対して、感染の疑いを強くもつこと、早期に適切な治療を行うこと、および感染管理を厳密に遵守することが必要であると考える。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
本論文も含め、本号には複数のESBL産生菌感染のリスク因子解析に関連する論文が掲載されている。手法の違いはあれ、結論はほぼ同様であり、基本的な事項である「感染症の早期かつ適切な診断治療」の重要性を改めて感じさせられる。
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