心臓外科手術を受けた小児における胸骨創感染のリスク因子:症例対照研究★
Risk factors for sternal wound infection in children undergoing cardiac surgery: a case-econtrol study
E. Ben-Ami*, I. Levy, J. Katz, O. Dagan, I. Shalit
*Tel-Aviv University, Tel-Aviv, Israel
Journal of Hospital Infection (2008) 70, 335-340
若年乳児および小児に対して、複雑で長時間の心血管手術を実施する機会が増えている。本研究の目的は、心臓手術を受けた乳児および小児の胸骨創感染の発生率、原因菌、およびリスク因子を明らかにすることである。1999年から2003年に三次小児医療センターで胸骨正中切開術による心臓手術を受け、術後胸骨創感染と診断された小児全員を試験群とした。術前、術中、術後の変数についてカルテレビューを行った。その結果を各症例の直前および直後に手術を受けた対照患者と比較し、ステップワイズ法によるロジスティック回帰モデルを用いて解析した。心臓手術を受けた小児1,821例中49例(2.69%)に胸骨創感染が発生し、このうち47例について完全なデータを入手することができた。29例(61.7%)が浅部創感染、18例(38.3%)が深部創感染であった。主な病原菌としては、黄色ブドウ球菌が14例(39%)、緑膿菌が12例(33%)にみられた。胸骨創感染の有意な独立リスク因子として、以下の3つの変数が明らかとなった。低年齢(オッズ比[OR]0.63、95%信頼区間[CI]0.47~0.85、1歳ごとにP<0.001)、チアノーゼ性心疾患(OR 4.93、95%CI 1.98~12.3、P<0.001)、および中心静脈カテーテル留置期間(OR 1.15、95%CI 1.06~1.24、1日ごとにP<0.001)。グラム陰性菌感染と、術前の酸素治療(P=0.007)および尿道カテーテル留置期間の延長(P=0.004)との間に有意に関連が認められた。本研究では低年齢が胸骨創感染のリスク因子であることが確認され、チアノーゼ性心疾患と中心静脈カテーテル留置期間が新たな独立したリスク因子として加えられた。グラム陰性菌感染の特異的なリスクが明らかとなり、このことは胸骨創感染の発生率と重症度の低下を目的とした新たな予防戦略の導入に役立つと思われる。
監訳者コメント:
サ胸骨創感染は時に致命的となり、心臓血管手術後の重大な合併症である。これに対する予防戦略は必須であるが、胸骨創感染のリスクの高い集団を明らかにする本スタディによって、ハイリスク集団に重点的に予防対策を実施することが可能になる。有用な研究である。
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