集中治療室におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の制御:10年間の解析★★

2007.12.31

Meticillin-resistant Staphylococcus aureus control in an intensive care unit: a 10 year analysis


E. Raineri*, L. Crema, A. De Silvestri, A. Acquarolo, F. Albertario, G. Carnevale, N. Latronico, N. Petrosillo, C. Tinelli, A. Zoncada, A. Pan
*Istituti Ospitalieri di Cremona, Italy
Journal of Hospital Infection (2007) 67, 308-315
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を集中治療室(ICU)で制御するためのプログラムの有効性に関するデータは限られている。一般ICUでのMRSA制御を目的として、「前後比較」観察研究により、search-and-destroy(S&D)戦略をS&Dプラス隔離(isolation)(SDI)戦略と比較評価した。S&D戦略は能動的サーベイランス、接触予防策、および保菌者の除菌処置からなり、SDI隔離戦略では、さらに隔離とコホーティングを追加した。プログラム導入前の期間1(1996~1997年)、S&Dプログラムを実施した期間2(1998~2002年)、および新しいICUでSDIプログラムを実施した期間3(2003~2005年)の3段階を設定した。10年間の研究期間中に3,978例の患者を観察し、期間1=667例、期間2=1,995例、期間3=1,316例であった。MRSA感染患者数は期間1=19例、期間2=23例、期間3=6例であった。1,000患者・日あたりの感染率は期間1=3.5例、期間2=1.7例、期間3=0.7例であった。期間1から期間2(P=0.024)、および期間2から期間3(P=0.048)に有意な感染率の低下が観察されたが、セグメント化回帰分析では、後者の低下は確認されなかった。ICUで獲得されたMRSA感染の割合は、期間1=80%、期間2=77%、期間3=52%であった(トレンド検定P=0.0001)。黄色ブドウ球菌分離菌株におけるメチシリン耐性率は、期間1=51%、期間2=32%、期間3=23%であった(トレンド検定P<0.0001)。S&D戦略は、MRSA流行中のICUにおけるMRSA感染、感染症伝播率、およびメチシリン耐性株の比率の有意な低下に有効である。SDI戦略により、S&D戦略の有効性がさらに増加する可能性がある。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
これは非常に素晴らしい論文である。MRSAが恒常的に分離されている状態(endemic situation)で、実際にMRSAに関連する感染対策の効果を評価していることが白眉である。また10年という長いスパンでの成果であるため、瞬間風速に終っていないことが、さらに価値を高めている。ただ惜しむらくは、MRSAの感染率を効果判定の指標としているために、実際にはMRSAの伝播を受けても発病しなかった人の割合が含まれていない可能性が考えられる。直接的な評価方法としては、ユニット内で伝達した実数と率を検討することがなお必要である。後は、これをユニット内だけではなく、病院全体で達成していくことが必要であろう。

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