精神科入院患者のヒトメタニューモウイルス感染症アウトブレイク:院内アウトブレイクの予防に対する擦式アルコール製剤の直接観察下での使用の意義★★

2007.12.31

Outbreak of human metapneumovirus infection in psychiatric inpatients: implications for directly observed use of alcohol hand rub in prevention of nosocomial outbreaks


V.C.C. Cheng*, A.K.L. Wu, C.H.Y. Cheung, S.K.P. Lau, P.C.Y. Woo, K.H. Chan, K.S.M. Li, I.K.S. Ip, E.L.W. Dunn, R.A. Lee, L.Y.C. Yam, K.Y. Yuen
*University of Hong Kong, Hong Kong, China
Journal of Hospital Infection (2007) 67, 336-343
精神科施設内での感染症の院内アウトブレイクはまれではないが、しばしば感染予防策の実施が困難な場合がある。本稿では、2005年7月29日から8月20日の間に精神科病棟で31例が関与した急性呼吸器疾患のアウトブレイクを報告する。逆転写PCR(RT-PCR)および塩基配列シークエンスにより、患者7例(23%)からヒトメタニューモウイルスを検出した。アウトブレイクサーベイランスの記録を再確認したところ、2005年には院内アウトブレイクが6件発生し、そのうち4件(67%)で呼吸器系ウイルス感染症との関連が確定あるいは推定された。2005年12月の日中の4時間ごとに精神科患者全員に擦式アルコール製剤を配布し、直接観察を行った。翌年発生した呼吸器系ウイルスの院内アウトブレイクはわずか1件であった。呼吸器系ウイルス感染症によることが推定または証明された院内アウトブレイクに関与した患者数および職員数の合計は60名から6名へ有意に減少し(P<0.001)、全種類の院内アウトブレイクについても70名から24名に減少した(P=0.004)。擦式アルコール製剤は、多様な院内感染病原体に対して強力な殺菌および殺ウイルス活性を有することが判明した。擦式アルコール製剤による消毒を定期的に直接観察することにより、特に精神障害のある患者では、呼吸器系エンベロープウイルスによる院内アウトブレイクの発生率と規模が低下する可能性がある。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
いわゆるアルコールゲルによる手指消毒の就業時訓練(on the job training)がアウトブレイク予防に及ぼす効果について調べた論文である。これは半ば強制的とはいえ、定期的にアルコールゲルの使用を促していくことで、スタッフの理解度と実践度の乖離を縮める教育的手法としては、大変よいアプローチであろうといえる。単に「手を洗いましょう」を大きなセミナー形式でレクチャーするだけでは、実施に行動に移せるようにはならない。

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