過酸化水素蒸気による汚染除去後の生物学的有効性および再汚染率の評価★

2007.10.31

Assessing the biological efficacy and rate of recontamination following hydrogen peroxide vapour decontamination


J.A. Otter*, M. Cummins, F. Ahmad, C. van Tonder, Y.J. Drabu
*BIOQUELL (UK) Ltd, UK
Journal of Hospital Infection (2007) 67, 182-188
病院内の無生物環境は、院内感染起因病原体により汚染される可能性がある。過酸化水素蒸気による汚染除去は、持続的な環境汚染の完全な除去に有効であることが示されている。著者らは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、およびゲンタマイシン耐性グラム陰性桿菌(GNR)の感染歴および保菌歴がある患者の個室で、MRSA、VRE、およびGNR汚染の程度を調査し、過酸化水素蒸気による汚染除去効果を検討した。病室内の事前に規定した15カ所からサンプルを採取し、選択増菌培養プロトコールでMRSA、VRE、およびGNRを培養した。実験は2回にわたって行い、それぞれ清掃前、清掃後、過酸化水素蒸気による汚染除去後、および汚染除去から19日目までの期間にサンプルを採取した。MRSA、GNR、VREによる環境汚染は、清掃前は検査箇所のそれぞれ60%、30%、6.7%で、清掃後はそれぞれ40%、10%、6.7%で認められた。過酸化水素蒸気による汚染除去後は、MRSA汚染が認められたのは1カ所(3.3%)のみであった。VRE再汚染は認められず、MRSAおよびGNR再汚染は過酸化水素蒸気による汚染除去後2日間は認められなかった。過酸化水素蒸気による汚染除去から約1週間後には大幅な再汚染が認められ、GNR汚染は清掃後のレベルに、MRSA汚染は清掃前のレベルに近づいていた。院内感染起因病原体を完全に除去するためには、通常の退院時清掃よりも過酸化水素蒸気が有効である。MRSAおよびGNR保菌患者の病室で、MRSAおよびGNRの急速な再汚染はなかったが、1週間以内に再汚染した。過酸化水素蒸気による汚染除去を院内で最適に実施するうえで、本研究の所見は重要な意味を有する。
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監訳者コメント:
おそらくは、過酸化水素蒸気を適切に使用すれば、環境中に残存しているMRSAなどを効率よく除去することが可能になると思われる。そうすれば、あまり一般的ではないが、汚染環境がリザーバーとなったMRSAアウトブレイクをコントロールすることが可能になるであろう。

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Journal of Hospital Infection (2021) 110, 172-177

 

 

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