ドイツにおけるPanton-Valentine型ロイコシジン陽性メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の大規模な医療関連アウトブレイクの管理★
Management of a large healthcare-associated outbreak of Pantone-Valentine leucocidin-positive meticillin-resistant Staphylococcus aureus in Germany
F.M.E. Wagenlehner*, K.G. Naber, E. Bambl, U. Raab, C. Wagenlehner, D. Kahlau, C. Holler, W. Witte, W. Weidner, N. Lehn, S. Harbarth, H.-J. Linde
*Hospital St Elisabeth, Germany
Journal of Hospital Infection (2007) 67, 114-120
本稿では、欧州でのPanton-Valentine型ロイコシジン陽性メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(PVL+ MRSA)の最大規模の医療関連アウトブレイクの記録を報告する。2004年、3カ所の長期ケア施設の初発患者6例が、ドイツの市中病院への入院時のスクリーニングでPVL+ MRSA陽性であった。この前向き研究の目的は、長期ケア施設の感染制御介入前後のPVL+ MRSA保菌率を報告することである。PVL+ MRSAおよびPVL- MRSAのスクリーニングを3カ所すべての長期ケア施設で、2004年(入居者453名、医療従事者240名)および2005年(入居者440名、医療従事者192名)に実施した。外鼻孔および可能であれば創傷部位のスワブを採取した。保菌が認められた入居者および職員は、ムピロシン鼻腔用軟膏および局所消毒薬で治療し、職員には衛生教育を実施した。2004年の入居者および医療従事者の全MRSA保菌率は11.3%(PVL+ MRSA 9.1%、PVL- MRSA 2.2%)であった。各長期ケア施設の保菌率は、入居者と医療従事者で同等であった。すべてのPVL+ MRSA分離株は、新規spa配列型t310を示す単一株(MLST 22)由来であった。2005年には、全MRSA保菌率(11.3%から5.5%)およびPVL+ MRSA(9.1%から3.3%)の低下が認められた。PVL- MRSAの割合には変化がなかった。皮膚感染症の症状は入居者または医療従事者に認められなかった。今回のアウトブレイクにおいて、不十分なPVL+ MRSA制御の原因は、保菌者の検出と除菌の困難および遅延、制御策の遵守不徹底、および公衆衛生当局による施策の欠如によるものと推測された。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
オランダや北欧諸国ほどではないものの、ドイツでもMRSAの保菌に対しては相当神経質である。本論文はその神経質さを伺えるものであると同時に、PVL陽性のMRSA(いわゆる市中感染型MRSA)の保菌者の広がりを示すデータとして興味深い。
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