フランスにおける6年間の手術部位感染制御プログラムの影響:INCISOサーベイランスの結果★
Impact of a six-year control programme on surgical site infections in France: results of the INCISO surveillance
C. Rioux*, B. Grandbastien, P. Astagneau
*Regional Co-ordinating Centre for Nosocomial Infection Control, France
Journal of Hospital Infection (2007) 66, 217-223
外科手術部位感染(SSI)は院内感染制御対策の重要なターゲットである。北フランスの病院からの自発的な参加による外科病棟のネットワークであるINCISOのデータに基づき、6年間のサーベイランスシステムの影響を評価した。毎年、手術患者を連続的に登録して、入院、外来を問わず手術から30日後までの調査を行った。それぞれの患者について、標準的な基準によるSSIの診断とともに、危険因子としての手術創分類、米国麻酔学会スコア、手術時間、待機手術か緊急手術の区別、鏡視下手術、および術式などを標準化した書式に記入した。毎年の調査終了時には、参加者が全米病院感染サーベイランス(NNIS)システムのリスクインデックスおよび標準化発生比※で補正した他の手術と比較できるように、ダッシュボードを掲示した。6年にわたり、548の外科病棟の手術患者150,440例から3,661件のSSIが確認された(粗発生率2.4%)。粗SSI発生率は3.8%から1.7%に減少(傾向検定P<0.001、相対減少率-55%)して、NNIS-0に補正したSSI発生率は2.0%から1%に減少した(傾向検定P<0.0001、相対減少率-50%)。ネットワークを通じてベンチマークを得ることを目指す積極的サーベイランスシステムは、SSI発生率を減少させるための有効な戦略である。最初の3年間を上回る低いSSIレベルを維持するためには、感染制御の取り組みを継続する必要がある。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
毎年の調査終了時にデータを掲示することから、“顔の見える”ネットワークでのベンチマーク作成となり、他病棟との比較によってSSI発生率を減少させた試みである。地域のネットワークによる取り組みが試みられている一方、やはりサーベイランスはフィードバックによって有効性が担保されるというオーソドックスな結論が導かれている。
監訳者注:
※標準化発生比(standardized incidence ratio;SIR):リスク分類に応じたベンチマークで、SSI発生率からSSI発生件数を予測して、実際のSSI発生数と比較する指標。
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