疫学的に確定したAcinetobacter baumannii臨床分離株の消毒剤抵抗性★★

2007.06.30

Resistance to disinfectants in epidemiologically defined clinical isolates of Acinetobacter baumannii


H. Wisplinghoff*, R. Schmitt, A. Wohrmann, D. Stefanik, H. Seifert
*University of Cologne, Germany
Journal of Hospital Infection (2007) 66, 174-181
殺菌剤に対する感受性の低下は、病院でのAcinetobacter baumannii流行の一因になる可能性がある。本研究は、異なるA. baumannii臨床分離株についての消毒剤感受性を評価する目的で実施した。20株のA. baumannii菌株を調べたところ、10株はアウトブレイク関連、10株は散発性であった。臨床分離株は、固有のパルスフィールド・ゲル電気泳動パターンを示すものを選択した。プロパノール、1-プロパノール+2-プロパノール+エチル硫酸メセトニウムの合剤、ポリビニルピロリドンヨード、トリクロサン、およびクロルヘキシジンのin vitro活性を、マクロ液体希釈法を用いて測定した。消毒剤への曝露時間は15秒~2分とし、臨床で発生する可能性のある過失による不適切な希釈の影響を調べるために、濃度は未希釈~4,000倍希釈の範囲とした。5株のATCC標準菌株(A. baumannii、大腸菌、緑膿菌、Enterococcus faecalis、黄色ブドウ球菌)を対照として用いた。全消毒剤は、各製造者が推奨する濃度および曝露時間で、すべての分離菌の発育を阻害した。試験した消毒剤のほとんどで、曝露時間が30秒未満であったか、または希釈された製剤を用いた場合は、ほぼそのままの生菌数が残存していた。アウトブレイク関連菌株および散発性菌株の間に感受性の有意差は認められなかったが、これを検証するにはさらに大規模な試験を要する。現在用いられている消毒剤に対する抵抗性は、おそらくA. baumannii流行の主要因子ではないだろう。しかし、推奨手順からのわずかな逸脱であっても、濃度または曝露時間の低下に関連する場合には、院内での交差伝播に影響をあたえる可能性がある。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
本邦では、消毒剤については、現場の自主性に任せて購入、管理、希釈、使用されているが、適切な希釈と接触時間を遵守しなければ、期待した消毒効果を得られないという危うさについては、全く認識されていない。感染制御が発達している国々では、滅菌とならんで、消毒の確実性は、医療の質の根幹をささえる重要項目として、また環境保全の観点から、薬剤師による管理、調製、配布、回収が行われている。くれぐれも、消毒剤はお札的効果(とにかく貼っておけば、効果があるような気がする)を期待してはならない。

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